MY STORYNo,12
RESEARCHER
研究者
Yukari
Naka
仲 ゆかり
防災研究所 助教
予測不能な集中豪雨の
メカニズムに迫る。
次世代に、
安心・安全な
世界を届けたい
高校時代の私には、これといった夢や目標はありませんでした。「環境問題」というぼんやりとしたテーマを掲げて京大農学部に進学しましたが、そんな姿勢ですから授業の内容にどこかのめり込めない自分がいたのです。「いちど選んだ道は変えられない」と思い込み、悩んでばかりの大学1、2回生を過ごしました。
入学した学科で扱う環境問題は、森林資源や食料問題など、社会や経済も絡んだ資源面が中心です。いっぽうで環境問題には、温暖化のメカニズムの解明など、地球全体の動きを見る地球科学的な側面もある。私の興味はこの側面だったのだと、ようやく気がついたのが3回生のころ。周囲が就職活動に励むのを横目に、大学院進学を視野に入れて研究室探しをはじめました。卒業後は就職するつもりでしたが、迷いばかりの大学生活で、「これを身につけた!」と言えるものがないことが心残りだったのです。
意を決して、大学院での方向転換
地球科学といっても、研究対象は大地、火山、海洋、鉱物など、幅広いです。なかでも私は、大気や気象などの空の動きに惹かれるものを感じていました。理学部の授業にもぐり込んだり、「京都大学/気象/大気」の用語で検索して出てきた研究室に見学を申し込んだり、自分の目と耳と足で、ぴったりくる居場所を模索しました。
そうして出会ったのが、現在も助教として所属する水文気象災害研究分野です。研究対象にしたのは梅雨前線と線状降水帯。線状降水帯は列をなした積乱雲が数時間にわたってほぼ同じ場所に雨域をつくり、強い雨を降らす現象で、梅雨期によく発生します。
発生には水蒸気の量や風量など、偶然性の高い複数の要素が絡むので、メカニズムの全貌は未解明。ゆえに予測が難しく、各地で想定外の豪雨や災害をもたらしています。局所的で、観測では捉えづらいこの現象に、データ解析やシミュレーションを駆使して迫ります。
大学院進学を選んだ時点で、研究職や専門職に進む覚悟を決めていましたが、背中を押した決め手は研究に夢中になれる自分を発見したこと。データの解析から検討、さらにはグラフの書き方一つとっても、すべてが新鮮で楽しかったのです。「私はこれがしたかったんだ」と、それまでの迷いを忘れて没頭しました。
ぶれない芯さえあれば、まわり道も恐くない
防災研究所には、河川や海岸、火山、避難活動などの多様な専門家が、「防災」の名のもとに集っています。研究室の上司からよく言われたのは、「雨だけを見るのではいけない。そこで暮らす人たちや社会の幸せを考えなさい」ということ。理論研究のさきにある、現実を生きる人びとや社会を考えることは私たちの研究に不可欠です。平均気温が上昇し、線状降水帯の発生頻度が増えれば、暮らしにさまざまな影響がでるはず。発生のメカニズムを解明し、集中豪雨の発生頻度の変化を予測することで、私たちはこれからどのような社会をつくるのか、考えるための材料を提供したいのです。
研究者としてのこれからの選択を考えて悩むことがありますし、将来は想像もつきません。でも、一つ確かなのは、次の世代にべんりで安心・安全な環境をつなぎたいという思い。まわり道をしたとしても、この芯さえぶれずにもっていれば、納得のゆく道を歩めるはずだと思っています。
若いときは先が見えない不安から、いちどの判断が人生を決めてしまうと思いがち。でも、選択したら終わりではありません。失敗も遠回りも恐れずに、いま信じているベストな選択をしてください。
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休日は旅行に行くのが大好きです。最近は、ずっと行きたかった宮崎県の高千穂に行ってきました

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『神様のカルテ』シリーズ 夏川草介 著(小学館)
忙しい医療現場で働くお医者さんと、その妻や友人との関わりを描いたお話です。患者さんの命と向きあう重みのある内容もあるのですが、読み口は重くなく、むしろ登場人物たちのおもしろい日常に笑えて、読んだあとはほっこりするような本です。仕事や日常で生きていくなかで、自分が大事にしたいものはなにかを考えさせられる深いストーリーと、軽やかで温かい読み心地がとても素敵で、シリーズをとおして大好きな本です。