MY STORYNo,15
GRADUATE
卒業生
Kawakami
Manami
川上愛美
Nano and Advanced Materials Institute
薬学部 卒業、薬学研究科修士課程 修了
長野県伊那北高等学校 出身
地元長野から京都、
そして世界へ。
新天地で広がる
視野が挑戦の証
京都大学への進学を考えはじめたきっかけは、オープンキャンパスです。当時の私にとって、生まれ育った長野県から県外の都市に一人で飛び出すのは、大きな勇気のいること。進学塾のない町で、自己流の受験勉強に明け暮れる日々。そんな状況でもモチベーションを高くもちつづけられた理由はというと、京大に「一目惚れ」したからとしか言えません(笑)。
進路選択の幅を広げた、授業での一言
合格が決まり、移り住んだ京都での暮らしはカルチャーショックの連続でした。まず、自動車なしでは買いものにも行けない地元と違い、自転車でどこにでも行けるのが衝撃的。そして、なにより「自由の学風」です。当時は取得単位数に上限がなかったので、1日5コマの週25コマ、授業を詰め込んだこともありました。薬学部は生物学や有機化学など、多分野の知識を学びます。わかることが日に日に増える楽しさに突き動かされ、勉学にとことんのめり込めたのも京大の空気あればこそ。どんな過ごし方でも許容してもらえる雰囲気は、とても居心地のよいものでした。
転機は、1回生で受講した平竹潤先生(故人)のポケットゼミ(現I・LAS セミナー「)きてみてさわって、有機化学が死ぬほど好き」。私の専門である有機化学のおもしろさにふれたきっかけの授業です。ここで平竹先生から、「人と同じ人生を歩むのはおもしろくない。きみには引っ込み思案なところがあるから、海外に行ってみるといいかもね」と言われたのです。国内の引っ越しですらそうとうの覚悟だった私にとって、留学は遠い世界の話。でも、その一言に揺さぶられて、英語の勉強にも力を入れはじめたんです。
そうして3回生の夏、交換留学の制度を利用してカナダに。驚いたのは、10代で京都に来たときほどのカルチャーショックを感じなかったこと。「思ったよりも違いはないんだ」という実感は、進路選択の幅をぐっと広げました。京大大学院の修士課程に進み、研究者としての基礎をしっかり身につけたあと、博士課程はアメリカの大学院を選びました。挑戦を決めたのは、「人と同じはおもしろくない」の精神からです。
全世界を視野に入れた就職活動
現在は、香港にあるNano and Advanced Materials Institute(NAMI、納米及先進材料研發院)で研究員として働いています。ナノテクノロジー技術を駆使した新材料の開発を軸に、企業と連携して製品開発をしたり、政府から研究費を受けて研究員それぞれが独自の研究テーマを追究しています。
就職活動では、世界中のどこにでも行くつもりで企業を探しました。最終的には、パートナーの香港での就職をきっかけに、香港の企業に焦点を絞り、建設やエネルギー、ヘルスケアなど多様な課題に取り組む会社に就職。2年めを迎え、環境負荷の少ない冷媒の開発に挑んでいます。まずは製品化して、市場に出すことが目標です。薬学部出身ですから、将来はヘルスケア分野にも携わりたいと夢を描いています。
選択肢を選ぶとき、選んだ理由は説明できなくてもいいと思うんです。「楽しそうだな」、「やってみたいな」、そんな気持ちで気軽に選択しながら進んだ一歩一歩が、自分だけの道をつくるはずです。
COLUMN
休日のすごし方
香港の印象は、料理がおいしくて、暑い場所。アメリカにいるときにはじめたボルダリングを香港にきてからもつづけています。
Recommend高校生のみなさんに手に取ってほしい作品
『わたしの美しい庭』 凪良ゆう 著(ポプラ社)
マンションの屋上庭園にある「縁切り神社」にやってくる〈生きづらさ〉を抱えた人たちを描いた短編集です。私がこの本を手にしたのは香港に来てから。世間の思う幸せとは異なる「幸せの姿」をもつ人たちの物語は、私の考え方とも共鳴する部分が多く、心に沁みました。「誰かに証す必要なんてなく、わたしはわたしを生きていけばいい」という一節は、私のお守りです。