みんなどうしてる?
育児、介護をしながらの、日々の研究活動のシーンでは、いろいろなお悩みが生じると思われます。
ここでは、男女共同参画推進センターが提供する情報、部局によるサポートなど、京都大学における現状と事例を共有します。
特集記事
ニュースレター第102号掲載(2022年5月25日)
研究者の妊娠・出産・復帰その④
妊娠中および産休・育休中の過ごし方
妊娠した後も、体調が許せばいつも通りに研究・教育活動を続けたいものですが、その内容によっては長時間の立ち仕事、高いところでの作業等危険を伴う作業があるかもしれません。そのような場合には、作業内容の変更や軽減等について、職場の担当者・責任者と相談ください。また、体の負担を減らせるように、ラッシュアワーを避けるなど通勤の時間や方法を工夫しましょう。妊娠中は具合が悪くなりやすいものです。職場で休憩できるスペースを確保し、場合によっては、医師等の指導を仰ぎながら、休憩時間の延長や回数の増加を職場の責任者等に申し出ましょう。主治医等の指導を職場にうまく伝えられない場合には、「母性健康管理指導事項連絡カード」(注1)を活用しましょう。
妊娠の経過には個人差があり、また一人目と二人目で経過が全く異なることもあります。また、二人目以降の妊娠では、家に帰っても上の子のお世話があり、一人目のときよりも身体にかかる負担は大きくなります。本人も周囲もそれまでの経験を一般化せずに、いろいろな事態に備えておきましょう。
気分不良での早退、受診、転倒、切迫早産、緊急手術など、本人が連絡できない状態になることもあります。もしもの時に備えて、配偶者等の緊急連絡先やかかりつけの産婦人科医等も、職場の責任者や事務担当者に伝えておきましょう。妊娠中は、身体に2人分の栄養を供給する必要があるので、普段以上に休息や睡眠が必要となります。研究活動については、産休・育休に入るまでに余裕をもって仕上げられようにする、研究グループ間の分担を調整する、研究計画を縮小あるいは後ろ倒しにする等の見直しをすることが必要になります。
学会発表については、抄録応募が半年から8、9カ月先であることが多く、妊娠判明直後から対応を考えておく必要があります。海外学会の現地発表については、航空機搭乗の制限、診断書の要否なども事前に確認しておく必要があります(注2)。発表を見合わせたり、上司・同僚に託したりするケースもありますが、最近はオンライン・ハイブリッド形式で開催される例も増えているので、応募に際して確認しておきましょう。国内学会であれば経過が順調で安定期であれば、現地参加することも、外国に比べると容易であることが多いでしょう。長時間立つのがつらい場合は、主催者に相談すれば、椅子の準備や座って発表などをさせてくれることもありますので、問い合わせてみましょう。万一出席ができなくなった際にバックアップしてもらえる共同研究者にも声をかけておきましょう。
大学の研究者の研究はそれぞれに高い専門性を有するため、産休・育休中の代替要員を探すのが難しく、新規性にかかる競争が激しい分野においては、数ヶ月のブランクも業績の評価に大きな影響を与えることなどから、産休・育休中も研究・教育活動などを事実上継続せざるを得ないこともあります(注3)。他方で、子どもとゆっくり真剣に向き合い、出産後の身体を十分に休めることも、とても大事なことです。業務と育児のバランスの取り方については、研究者ごとに考え方は異なり、例えば家族の構成や生まれてきた子の特性や成長の具合などの状況によっても変わり、各自が悩みながらその都度、選択をしていかざるを得ません。職場や研究グループが当該研究者に期待する働きぶりもあり、研究者の研究・教育活動もそのような周囲の支えがあって初めて成り立ちます。風通しの良い環境の下で、連絡や相談がしやすい関係を築かれることを願っています。
本コラムは、今回をもって終了いたします。本ワーキンググループでは、学内の教員がボランティアでセンターの育児介護支援事業を担ってきました。人的・経済的リソースが限られている中、孤独に育児と研究・教育の両立に奮闘している同僚や後輩に対して、私たちができる支援があるとすれば情報提供であろうと、各メンバーも、自ら幼い子どもの世話と仕事を抱える中、執筆や議論の時間を捻出してきました。残念ながら、センターの改組に伴うワーキンググループの廃止により、突然終了せざるを得なくなりましたが、本コラムが皆さまに少しでもお役に立つことがあったのであれば望外の喜びです。ご愛読ありがとうございました。
(旧育児介護支援事業ワーキンググループ一同)
注1)「母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について」
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/josei/hourei/20000401-25-1.htm
注2)多くの海外旅行保険においては、妊娠・分娩等にかかる費用は保険の対象外になっていますので、妊娠に関連する高額な医療費等が自己負担になる可能性があります。
注3)ただし、休暇・休業中は研究費の支給が多くの場合停止することについては、コラムその②を参照ください。