みんなどうしてる?
育児、介護をしながらの、日々の研究活動のシーンでは、いろいろなお悩みが生じると思われます。
ここでは、男女共同参画推進センターが提供する情報、部局によるサポートなど、京都大学における現状と事例を共有します。
特集記事
ニュースレター第99号掲載(2021年11月15日)
研究者の妊娠・出産・復帰その① 妊娠の報告と対応
研究・教育等で忙しくしている中、初めて妊娠した場合、初めて経験する体調の変化とどのようにつきあっていけばよいのか、業務や研究活動をどうするか、周囲の人へいつ、どのように報告すればよいか等悩みは尽きません。本コラムでは、これから数回にわたり、妊娠された本人に役に立つと思われる(注1)、また、職場で身近な人が妊娠された、あるいはされる可能性がある場合に参考になりそうな情報をそのような経験をした者の目線でお伝えしていきたいと思います。
今回は、いつ、どのように報告するかと、職場はどのように対応すべきかと、職場側の対応について取り上げます。
産婦人科で妊娠を告げられ、自治体で母子手帳を交付されると妊娠生活が始まります(注2)。妊娠が判明しても、その後起こりうるさまざまな事態を考えれば、直ちに職場に告げることを躊躇されることもあるでしょう。しかし、健診を受けるために休んだり、体調の変化に応じて業務内容を見直してもらったりする必要が出てきます。また、妊娠は、どのように健康な人であっても、順調に経過するとは限りません。出産予定日が確定する頃には悪阻(つわり)がはじまり思うように仕事ができなくなったり、切迫流産のために突然自宅・病院での安静が必要になったりする場合もあります。また、いずれ産休に入り、職場から一時離れることにもなりますので、職場には、代替人員の手配等の対応に向けた準備の時間が必要になります。そのため、妊娠が判明したら、早めに職場の責任者に報告し、さまざまな事態に備えましょう。万一身動きがとれなくなった場合に備えて、業務の引き継ぎや自宅の仕事環境の整備なども併せて行っていくとよいでしょう。報告は、まず、職場の責任者や仕事・業務で直接かかわる人に、次いで少しずつ周囲の人に、とすることが多いようです。妊娠出産の可能性およびその場合の仕事の希望などは、直接関連する上司には普段から相談をしておくと、いざという時に対応もしやすくなります。
一般企業とは異なり、大学の研究職においては、この種のことを誰に相談・報告するべきなのかが明確でない場合もあります。しかし、妊娠初期は心も体もデリケートな時期で、適切な対応や配慮が求められるともに、妊娠の経過に応じた業務上の対応も必要になります。日頃から、妊娠が分かったら誰に報告するのかなど、職場としてそのような事態を予定していることを周知し、構成員の相談や報告のハードルを下げておくことが望まれます。
一方、妊娠の報告を受けた職場の責任者は、慎重に対応する必要が生じます。妊娠はデリケートな個人情報であり、無事に出産を迎えられるその日まで何が起こるか分かりません。本人の意思に反して、業務上必要な範囲を超えてその事実を第三者に告げることは控えましょう。また、妊娠・出産に関わる学内の制度について、事務担当者に情報提供を受けるよう助言をしましょう(注3)。
妊娠をしたこと、妊娠中の時差出勤などの母性健康管理措置や深夜業免除などの母性保護措置を受けたこと等を理由に、降格等の不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。また、妊娠したことを理由に仕事や研究を辞めることを促したり、妊娠中の業務の軽減について不満を述べたりすることにより妊娠中の人が働き続ける環境を悪化させることはハラスメントに当たります(注4)。職場の責任者には、自らそのような行為をしないことはもちろん、そのようなことが行われないような職場の環境作りが求められます。
出産までの数か月間は、意外と短いものです。いざというときに慌てないように数か月先まで余裕をもって計画をたて、家族や周囲の人と相談しながら、お腹の子どもとの大切な時間を健康にまた穏やかに過ごしていただけることを願っています。また、職場の同僚や責任者にあたる方々においては、妊娠した女性が相談しやすい雰囲気を作っていただけるとありがたいです。
(文責 育児・介護支援事業WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)
注1) 妊娠・出産にかかる法制度について、以下のウェブサイトでは、働く女性の視点で整理されています。
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/ninshin/
注2) 以下のウェブサイトでは、京都市の委託を受けて、公益社団法人京都府助産師会が、不妊・不育症、思いがけない妊娠等に悩む人たちに向けて、情報や相談窓口を提供しています。https://www.ninshin-hotnavi.com/
注3) 学内の支援制度についてのパンフレットがございます。
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaaboutgender_equalitydocuments201908.pdf
注4)「 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとなり得る言動例について」
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaaboutfoundationhuman_rightsharassmentdocuments
2016gendourei.pdfをご参照ください。