みんなどうしてる?
育児、介護をしながらの、日々の研究活動のシーンでは、いろいろなお悩みが生じると思われます。
ここでは、男女共同参画推進センターが提供する情報、部局によるサポートなど、京都大学における現状と事例を共有します。
みんなの対応事例集
ニュースレター第87号掲載(2019年9月15日)
保活入門 その② 就学ポイント
前回ご紹介したように、本年度から、京都市の基本指数において就学ポイントは就労ポイントと同等に扱われることになりました。基本指数は従事する時間に応じて決まるのですが、就労ポイントが就労証明書だけで事足るのに比べて、就学ポイントを適正に認めてもらうために特別な苦労を要する事情があるようです。
就学のカテゴリーで申請する場合、添付書類として在学証明書の他に「スケジュール申告書(時間割でも可)」を求められています。自己申告のスケジュール申告書の通りに従事時間が認定されるならよいのですが、そうはいかないでしょう。学生にとっては、授業がない時間帯も自由な時間というわけではありませんから、時間割だけでは証明書類として不十分です。授業の予習・復習、さらには自身の研究テーマについての調査や実験、場合によっては研究室の業務の手伝い、医療系の場合にはさらに診療などに従事することもあります。このような実態を書類で証明することは難しく、窓口となる福祉事務所に、丁寧に根気よく説明をしていかざるを得ないのが実情のようです。
日本では、学生は、制度上授業料を払うことになっていますが、学生が従事する業務の社会的価値は、雇用されている研究者のそれと全く変わりありません。保活が必要な大学院生に、雇用されている研究者に劣らず多忙な生活を送っている実態について、一筆書いて証明するなどの形で協力することも、指導教員の業務の一つといえるでしょう。名古屋大学では、指導教員が学生の就学・勤務状況を証明する書式を用意しています(注1 )。
医学部の大学院生には、非常勤先で診療(場合によっては夜勤)をしながら研究を続ける生活実態を理解してもらうために苦労する例が後をたちません。外勤先に就労証明書を書いてもらうのは当然として、認可保育所への入所を認めてもらうために、多忙な実態を伝えようと、ありとあらゆる手段を講じる涙ぐましい努力について、さまざまな体験談がWG にも寄せられています。
日本学術振興会(学振)の特別研究員(PD)も、難しい現実に直面します。特別研究員(PD)は、学振とも受入機関とも雇用関係にないため就労扱いにならず、学生でもないので就学扱いにもなりません。学振は、研究員としての身分は証明してくれますが(注2 )、勤務実態が多様な個々の研究員の就労時間を証明してくれるわけではありません。ただ、そのウェブサイトには、このような制度の公式の説明書があり、保育所入所手続などで利用できるようになっています(注3 )。この身分で保活をした人には、別途事情を説明した文書を添付し、所属する研究室の教授などに勤務実態について証明してもらい、何とか認可保育所の利用を勝ち取ったという例もあるようです。
本年の5 月、幼児教育・保育を無償化する改正子ども・子育て支援法が成立しました。これにより、本年10 月から、3 ~5 歳児は原則全世帯において、また、0 ~2 歳児は住民税非課税の世帯において、認可保育所や認定こども園、幼稚園の利用料が無料になります。無償化により保育の潜在的な需要が掘り起こされ、待機児童問題は深刻化するおそれがあることが指摘されています。
WG では、来年4 月入所を目指される方その他研究者の保活に関心を寄せる方のために、保活情報交換会を企画しました。保活経験者にその経験をご披露いただいたり、紙面ではお伝えしきれない情報を交換したりする場にしたいと考えています。関心をお持ちの方は気軽にご参加ください。
(注1 )http://www.kyodo-sankaku.provost.nagoya-u.ac.jp/work_balance/kinmu/
(注2 )下記掲載のウェブサイトにおける様式10 。
https://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_tebiki/yoshiki/saiyouchu.html
(注3 )注3 掲載の様式10 の参考書類「特別研究員制度をご存じない方へ」。
(文責 育児・介護支援事業WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)