京都大学男女共同参画推進センター / Kyoto University Gender Equality Promotion Center

コラム

夫婦どちらのキャリアも犠牲にすることなく、
社会全体で子育てを

田所 篤

経済学研究科
研究テーマ:国際経済における政策効果

今年(2022年)4月に京大にやってきました。
急に着任が決まったため、以前からの非常勤講師の職も掛け持ちしながら、大学院生の妻とともに4か月になる娘の育児もこなす忙しい毎日を過ごしています。




育児に不可欠なのは体力とサポート

とにかく寝ない…ほんとに寝ないし大声で泣いていても理由がわからず泣き止まない。一番大変な時期は困惑することが多く、たとえ自分が専業主夫であっても、一人で育児をすること自体が不可能、ワンオペって何!?といつも感じていました。少し慣れてきた今でも夫婦二人で一人の子どもの世話をするのが精いっぱいだと思うことがあります。特に私たちのように実家の祖父母も忙しい場合、夫婦で子育てをするには社会のサポートが不可欠であることを痛感しています。どうすれば良いのかわからず困惑する場面に出くわすことが想像していたよりも多く、でもそのおかげで外で見かける子育て夫婦も同じような経験をしているんだなと考えるようになり、気を遣うことが増えました。自身が子育てに参加することで、世の子育て世帯に対するリスペクトが生まれ、子育て支援制度・政策の設計も進むのではないかと感じています。幸い研究室のメンバーは育児の先輩方が多く、帰宅の時間など気にかけてくれ色々なアドバイスもいただけるので、娘優先のスケジュールで動くことができて助かっています。
また、京都市の認可保育所へ入れなかったため、男女共同参画推進センターの待機乳児限定の保育室を利用することで妻も私も研究時間を確保できています。ともかく育児は体力勝負、夫婦ともに体調をくずさないということを第一に心がけています。

娘の成長を楽しみ、見守る

4ヶ月になり首も座ってきたので、少し動きがでてきています。一生懸命寝返りをしようとしたり(まだ全くできていませんが・・)、物をギュッとつかむようになったり。また、色々なものを目で追うようなしぐさも見せてくれます。最近は何人かの人ごみの中から私のことを「親」だと認識してくれているのがわかったのが嬉しかったですね。今は娘がにこにこ笑って元気に成長していく姿を見ているだけで楽しいです。話せるようになったらどんな会話をするのかな、娘がおもいっきり遊べるところに旅行に連れていきたいな、と楽しみにしています。このように、今までは自分の事を中心に考えることがほとんどだったのが、自分のキャリア以外に娘の将来を考えてみたり、思考の幅がかなり広がった気がします。これから成長するにつれて動きも多くなり危なっかしいことも増えるだろうけれど、娘が行動する前に「危ない」「やめなさい」ということはせず、ギリギリのところまで経験させて、娘自ら物事の良しあしを学ぶ過程を見守りたいなとか、すごく先のことなのですが考えています。

家事・育児は何でも一通りできるように

家事の分担については特に決めてはおらず、余裕がある方が担当しています。とは言っても今私はなかなか時間が確保できず、家事・育児の大部分を妻に頼っています。来年になったら私は仕事が少し落ち着く予定で、反対に妻は博士論文の執筆でおそらく時間に余裕がなくなります。その時になっても問題がないように、一通りのことはできるようにしています。例えばおむつの交換やお風呂に入れることなどは普段からしていますが、病院に連れて行くときに母子手帳の置いてある場所など都度聞かなくても済むよう、細かいこともきちんと覚えておくように意識しています。あとは、まもなく始まる離乳食作りにもチャレンジしてみたいですね。
妻が大学院を卒業して就職すると二人とも十分な時間は無くなってしまうかもしれませんが、そのときどきに応じて分担のバランスを調整できるようにしたいと考えています。


電子書籍派なので、研究室には全く本がありません

現在の仕事について

研究内容:
関税や法人税等の政策が関係各国にどのような利益をもたらすのかについての理論研究をしています。

研究テーマを選んだ理由:
関税や法人税等の政策は、政策を行うその国だけではなく、その他の国の経済とも相互に、そして複雑に絡み合い、関係各国に様々な影響をもたらします。各国の関税や法人税などの税、補助金制度のありかたについて、国際社会でどのようなルールを設けることが望ましいかを考えることに興味があったため、このテーマを選びました。

今後の目標:
理論モデルをベースに進めている研究を発展させ、現実の政策にも適用できるような研究成果をあげることです。

若い世代へのメッセージ

女性の社会進出や核家族化が進む現代社会では、社会のサポートが充実していなければ子育ては簡単ではなく、夫婦一方、また時には両方のキャリアの犠牲の上でやっと成立するものだと思います。まずは社会全体でこの問題認識を共有することが大事です。 その上で、夫婦のキャリアを犠牲にせずに子育てができる制度・政策の普及が進むことを望みます。ゆくゆくは学生でも将来の不安を気にすることなく結婚・子育てが選択できるような社会になると良いなと思っています。