研究も子育ても自然体で!
足立 俊輔
理学研究科
研究テーマ:超高速分光、超短パルスレーザー、非線形光学
理学研究科化学専攻の准教授です。
化学をきちんと学んだことのない(大学・大学院では物理学を専攻)私でも、化学の教員として受け入れてくれるのが、京都大学の懐が深いところでしょうか。
現在11歳から0歳までの2男3女がいます。
5人の子育ては大変ではない?!
「お子さんが多いと大変でしょう」と周りの皆さんから良く言われますが、子育てで一番大変だった時期は、断トツで一人目が生まれた直後でした。昼も夜もなく、理由もなく泣き続ける(ように当時は思えた)長男を前に、私も妻も疲労困憊でした。そんなとき妻が「子どもは4人、最低でも」と突拍子もないことを言い出したときは、冗談だと思いました。その時から10年が過ぎ、5人の子どもの親になったわけですが、一人目の子育てがあってこそ、また妻のあの言葉があってこそ今がある、と妻と長男には感謝しています。私はもともと独身の頃から、研究に没頭し過ぎて生活が適当になってしまうことがなかったので、子どもが生まれてからも特に自分の時間が無くなる、という感覚はありません。休日は子どもと過ごして一日が終わってしまいますが、それが普通でとても幸せだと感じることができています。研究と家庭の両立といった難しいことは考えられないので、とりあえず「やればできるもんだな」と思っています。
子だくさんのススメ
3人目(以降の子ども)は可愛いと、いう言葉を耳にしたことがありますが、確かにそう感じます。数式を使った説明で申し訳ないのですが、私の感覚では、子供の人数をNとすると、子育ての大変さは1-exp(-N)に比例します。この数式では、子供の人数Nが小さいときはNの増加に伴って値(子育ての大変さ)が増加しますが、Nが大きくなると値は一定になり、それ以上増えなくなります。子育てに割けるリソースは有限である、ということの表れと言っても良いかもしれません。ともかく、子育ての大変さは3人目ぐらいで頭打ちになる一方で、子供の可愛さは一人一人変わりません(つまりNに比例して増加する)。3人目以降は本当に泣いていても怒っていても何をやっても可愛い、というゆとりが生まれ、孫を見守るような気持ちになっています。実際に5人目が生まれたときは、上の4人の子どもたちも大喜びで、みんなが赤ちゃんの取り合いをして完全にアイドル状態になりました。赤ちゃんがいる暮らしというものは、本当に心が癒されますし、いいものです。
一人目の子育てが大変で、2人目、3人目を躊躇されている方、大変さはそうそう変わりません。一方、喜びは間違いなく増えますので、自信を持ってたくさん子どもを持つことをおすすめします。
子ども担当として
家事・育児の担当のことを他の執筆者たちも話題にされていますが、私は基本的に子ども担当です。平日は朝の子供たちの準備のサポート、保育園の送迎を妻と分担、また帰宅後に子供と一緒に遊んだり、宿題をサポート。休日は、一週間分の食料品日用品の買い出しの運転、子供と外遊び等。掃除や食事作り等主要な家事と所謂「名もなき家事」は妻が担っています。子供の数が多くなるにつれてそれぞれの子供のスケジューリングも大変になってきましたが、そのスケジュール管理、子供の習い事の送迎の大部分、子供関係の諸連絡等は妻が行っています。私は、対外的にはよく「頑張っているお父さん」として褒めていただいたりしますが、フルタイム勤務ながら妻が家庭全般をマネージングしてくれていることに支えられていることを実感します。「子育てする!」という気負いもなく、毎日自然に子どもに向き合え、メディア等に極力頼らず子供たちの日々の喜怒哀楽を目の当たりにしながら、子育ての醍醐味を感じる日々です。
現在の仕事について
研究内容:
とても短い時間だけ光るパルスレーザー装置を用い、非常に高速に進行する化学反応の一瞬一瞬をリアルタイムで(時間を追って)観測する研究を行っています。
研究テーマを選んだ理由:
レーザーの光が綺麗だったので・・・。どうせ研究をやるなら綺麗で楽しい方がいいよね、という単純な発想からです。
今後の目標:
いろんな方面に手を広げて、というタイプでもないので、今進めているプロジェクト(「水の窓」とよばれる領域の軟X線パルスレーザーを用い、液相の化学反応過程を観測する)を頑張って進めたいと思います。
若い世代へのメッセージ
このコラムを執筆された他の先生もおっしゃっておられますが、子どもは3才までで一生分の親孝行をする、と言われます。子育ての大変さばかりが強調されがちですが、それを大きく上回る何かを子どもたちは親に返してくれる、ということを実感しています。若い世代の皆さんも3才までに、一生分の親孝行に値するだけの喜びと幸せをご両親に与えています。次は皆さんが、その喜びと幸せを子どもから与えられる側になってもらえればと思います。
=取材を終えて=
取材の間はずっと、研究のことも子育てのことも同じテンションでお話しされていた足立先生。全く気負いのない日々の生活の様子が伝わってきました。とはいえ、「やはり5人の子育ては大変なこともあります・・」と笑っておられたのが印象的でした。