“イクメン”という言葉がなくなる社会が目標
水野 桂
医学研究科
研究内容:前立腺癌のがんゲノム研究
京都大学医学部を卒業。2年間の初期臨床研修の後、泌尿器科医として7年間臨床に携わり、2017年に京都大学大学院医学研究科に入学。妻も同じ京大の医学研究科で大学院生をしています。
「思い通りにいかないのが当たり前」をモットーに
妻は初期臨床研修の同期で、結婚した時はお互い外科系診療科の専門研修中でした。二人とも日中の通常業務に加え、当直業務や夜間の緊急呼び出しの対応など仕事が忙しいこともあり、子育てを始めるのは大学院生になってから…と漠然と考えていました。夫婦そろって臨床医をしながら子育てをするには、どうしても仕事をセーブするか、子育てへの関わり具合を減らすかを迫られると思ったからです。
現在は大学院生という立場での研究なので、自分の時間を割とコントロールしやすく、私も積極的に子育てに参加することができます。保育園に預かってもらっている間や、子どもが寝てからの限られた時間で研究に集中し、家庭では研究のことは忘れて子どもとの時間をしっかり作るように心がけています。子どもが生まれた後は、より、家庭と仕事のバランスを考えるように(家庭の方にも重点を置くように)なりました。ありがたいことに、あまり手が掛からない子なので苦労したエピソードはあまり思い浮かびませんが、最近、ぐずった時に母親じゃないと泣き止まないことには困っています。自分では割と育児には協力している方だと思っているのですが…そこはやっぱり母親じゃないとダメなのでしょうね。それでも日々できることが増えていくのを見るのは、やはりとても楽しく、色々な苦労も忘れてしまいます。息子は何かできるようになると、満面の笑みでドヤ顔を見せてくるのでこちらも嬉しくなります。
毎日の育児の中で学んだことは、限られた時間の中で効率よく自分のしなければならないことをする術、思い通りにいくことはそんなにないという考え方。また、とりわけ気づいたことは親への感謝でしょうか。ここまで育ててくれたことには、本当に感謝しかありません。
夫婦で仲良く家事分担
帰ったらまず私が子どもをお風呂に入れます。このお風呂時間は私にとってとても大切な時間で、息子の成長がよくわかる貴重な時間でもあります。お風呂が終わったあとは、離乳食を食べさせ、食べ終わるとまた一緒に遊びます。私と息子が一緒に遊んでる間に、妻が夕食の準備をし、妻と一緒に夕食を食べたあとは、子どもを寝かしつける時間です。妻が子どもと絵本を読んだり、歌を歌って寝かしつけているその間に、私が食器洗いなど片付けをしています。平日はいつもこのような流れで、夫婦で家事を分担しながら過ごします。特に家事の分担の取り決めはありませんが、自分にできることを率先してやるようにしています。
子どもが急に熱を出したことも2回ほどありましたが、二人で連絡を取り合って手の空いている方が迎えに行き、迎えに行けなかった方も早めに研究を切り上げて、二人で協力して様子を見てあげることができました。子どもが生まれて以来、里帰りや両親に手助けをお願いすることもなく、全ての子育てを二人でやってきたので、私が協力的に子どもの面倒を見ていることは妻にも心強く感じてもらっているようです。
子ども中心の休日
休日は、子どもと家で遊んだり、買い物や散歩に出掛けたり、ほとんど一日中子どもの傍にいます。日々成長する子どもの様子を見ていると、まったく飽きることがありません。最近は這って家の中を縦横無尽に探検し、掴まり立ちできる場所を見つけては掴まり立ちをし、こんな所にも手が届くのか、と驚くような高さにある棚や引き出しを開けて中の物を引っ張り出すのに夢中です。おもちゃ箱には目もくれずそんなことをしている様子を見て、子どもの好奇心や関心は親の想像とは全く別の所にあるのだなぁと苦笑しながらも感心してしまいます。子どもが昼寝をしている時は、夫婦でお茶をしたり、何気ない会話を楽しんだりゆったり過ごしています。今は子どもと過ごす時間も、夫婦でゆっくりする時間もあり、非常に充実した毎日を送っていると実感しています。夫婦とも旅行が好きなので、もう少し子どもが大きくなって家族皆で旅ができるようになるのを今から楽しみにしています。
若い世代へのメッセージ
男性が育児に積極的に参加できる、女性が出産育児を理由にキャリアを断念しないで済むような社会ができたらいいですね。「イクメン」という言葉がなくなるのが理想ではないでしょうか。
現在の仕事について
研究内容:
前立腺癌のがんゲノム研究をしています。がんは正常細胞のゲノム(DNA配列)に異常が蓄積することで発症する「ゲノムの病気」です。前立腺癌のゲノム異常を調べることで、異常に応じた治療薬の選択をするなどの個別化医療の進展につながることが期待されます。現在は特に、血液中に存在する、がん細胞由来のゲノム異常を調べる研究を行っています。
研究というと、実験室で薬をピペットで吸って細胞などに振りかけたり、マウスなどを用いた動物実験などを想像される方が多いと思います。しかし、ゲノム解析は主に、コンピューターの前に座って解析プログラムを書きながら行います。従って、プログラミングの知識は必須なのですが、研究を始めるまでプログラミングのプの字も知らなかったので、慣れるまでは苦労しました。
研究テーマを選んだ理由:
大学院の上司からテーマを与えられました。癌組織を用いたゲノム解析は広く行われてきており、解析結果を基にしたがんゲノム医療は現実のものとなってきています。ただ、癌組織の採取は患者さんにとって負担であり、時に組織採取自体が困難な場合もあります。血液から癌組織に含まれるゲノム異常が分かれば、患者さんへの負担を少なくし、がんゲノム医療をより推し進めることが可能と考えられ、研究テーマとしました。
研究で心がけていること、モットーは?:
臨床医の視点で、臨床に還元できるような形で研究成果を出せればと考えています。
今後の目標:
一旦臨床から離れて研究をしたことで得られた視点や考え方をもって、また臨床に携わっていきたいと思います。
学内および公的制度やサービスの活用
男女共同参画推進センターの待機乳児保育室(ゆりかご)は、妻が情報を得てきました。
生後3か月の頃より利用していますが、保育室内でお友達も増え、毎日楽しそうに過ごしているようです。
=取材を終えて=
毎朝の登園はほとんど夫婦2人で来られる水野先生。
いつも笑顔で子どもと接する姿を見ていると、本当に子育てを楽しんでおられるなと感じます。