計画構想の内容
京都大学における女性研究者は、いずれも高い研究ポテンシャルを有している。そのため、女性研究者がその能力をいかんなく発揮できる環境を整え、充実させることは、更に卓越した多くの女性研究者を生みだしていくことへと有効につながる。いわば山を高くすることにより裾野を広げ、それによってまた山を高くするという相互作用を実現するのにもっとも適した大学が京都大学なのである。
女性研究者の質と量の充実は、いうまでもなく大学全体の知的活力の上昇につながる。優秀な研究者を増やすという意味ではもちろんのこと、多様な属性や背景をもつ研究者の存在は、京都大学の特徴である自由な発想にもとづく独創性をいっそう高めることに成るだろう。ジェンダー、エスニシティ、階層など、多様性を活かすことが社会の活性を高めるというのは近年の社会理論の実現そのものである。
女性研究者支援の「京都大学モデル」では、このシナリオを実証すべく幅広く手厚い女性研究者への支援によって女性研究者の活躍を妨げる諸要因を取り除く一方で、メリットベースにより優秀な女性研究者がよりよい高い水準の達成を実現できるよう、重点的な支援も行う。近い将来得られる成果は、他の大学等研究機関における女性研究者支援に対してモデルケースとなるものと確信する。
男女共同参画が謳われる社会的背景の中で、ある意味特殊な職場環境におかれる大学等の研究機関に所属する女性研究者は、依然として多くの問題を抱えたままとなっている。そして、その結果は、前述のように京都大学においても女性研究者の少なさとして現れている。大学全体の女性の教員・大学院生に締める比率は着実に増加してはいるが、学部学生のそれに比べると依然として非常に低いのが実情である。特に、自然科学系女性研究者の割合は低く、女性研究者育成の場での大きな障害ともなっている。科学技術の分野でキャリアを伸ばしていこうとする女性研究者が抱える問題を洗い出し、その根底・背景にあるものを探り、さらにそれらの問題を解決することは、女性研究者が働きやすく、また、その能力を存分に発揮できる性差ない環境の醸成に直結する。これは、社会との深い連携の中で、「自由の学風」による卓越した知の拠点を目指す京都大学においてはとりわけ重要な責務である。この覚悟に基づいて京都大学は、本女性研究者支援事業を「京都大学モデル」として提唱する。
大学で研究を行いそのキャリアを伸ばしていくにあたって、特に、女性研究者において様々な障害が顕在化する場合が多く、ある一面からのみの支援では不十分である。また、居住している地域の条件とも密接にリンクしているため、大学と地方自治体やその他の地域コミュニティーとの「地域連携」による女性研究者支援も非常に重要である。従って、京都大学および、地域が連携し、女性研究者のかかえる諸問題に対して、包括的に支援していくことが必須である。
本事業では、事前に行った学内調査結果を基に、女性研究者が抱える問題を以下の3点であると認識し、これらを解決するための支援事業を遂行することを目的とする。
1.女性研究者に対する理解不足と性差別
2.出産・育児・介護おける負担
3.上記(2)に伴うキャリアの中断
これらの問題を解決する為に、本「京都大学モデル」では、「交流・啓発・広報」、「相談・助言」、「育児・介護支援」、「柔軟な就労形態による支援」という4つの支援事業を柱を設定し、これらの下で8つのプログラムを展開する。