キャリアストーリーを知る女性研究者インタビュー
消去法で選んだ道が運命だった。自分を発揮できる環境を得られた幸せ
農学研究科 准教授 / 山根 久代 (YAMANE Hisayo)
- 京都大学農学部卒業
- 同大学院農学研究科修士課程修了
- 同博士後期課程退学
- 京都大学農学研究科助手
- 同准教授
[研究テーマ] 果樹の花成・休眠・受精・結実など生物季節学的生理機構に関する研究
面白いと思えるものを求めた先に、研究者への道があった
子どもの頃から植物は好きでしたが、農学部への進学を決めたのは、実は消去法でした。私はもともと完全な理系タイプで、何かにコツコツと打ち込むのが大好きな方。でも、医学の道に進んで人の命を預かるのは怖いし、植物なら再チャレンジもあるのではないかと思いました(笑)。自分に向いていることで、何か役立つことがしたい。そう考えた時に、しっくりくるのが農学部でした。
選んだ学科は、作物生産を勉強する農学科。当時は今より学科体制が細かく分かれていて、研究室も稲なら稲、野菜なら野菜と、作物別に分かれていました。授業ではそれぞれの先生が専門の作物を詳しく教えてくれて、実習では実際に作物に触れて育てて研究して。いざ勉強を始めてみると、すべてが新鮮で、私がやりたかったことはこれだ! と思いました。
研究者になるという道は、その延長線上にあっただけでした。その時、与えられていた研究テーマが先端的で、すごく面白く感じました。学会で発表すると、出席者から反響があり、もうちょっと頑張ったらまた皆さんが興味を持ってくれるかなと。そんな感じでどんどんのめり込んでいきました。博士課程に進むということは、その先の人生を決めるということ。もちろん不安はありましたが、「今、面白いことがあるんだから、それをやればいいじゃないか!」と、持ち前のポジティブ思考で突き進んだような気がします。
自然が相手の研究は大変。でも自分ができることを精一杯!
今は三つの研究テーマに取り組んでいます。一つは10年前から行っている植物の「休眠現象」。植物が冬に葉を落として春に発芽する、その仕組みを遺伝子レベルで解明しようというものです。これは農学というより植物学に近い研究です。そして、もう少し生産・消費に関わることがしたいと思い、数年前からブルーベリーとライチの研究を始めました。ブルーベリーのおいしさを決める要因を解明したら、効率よくおいしいブルーベリーが作れるんじゃないか。種が小さくて食べられる部分が多いライチを、実を壊さずに予測する技術を開発できないか。そういった研究をしています。
果樹が相手なので、まずしっかり育てないと始まらないし、収穫シーズンが1年に1度なので、その時にきちんとデータを得ないと先に進まない。農学の研究はそこが一番大変かもしれません。育てつつ、分析しつつ、技術の進展を追いながら論文にも目を通す。子育てをしながらなので、思いどおりに進まないこともありますが、そこはある程度割り切って。自分にできることを精一杯やるしかないと思っています。打ち込めるものに出会えて、個性を活かせる場所があって、自分の価値を認めてもらえて…… 忙しい日々ですが、幸せな環境だなと感じています。
毎週火曜日には、学生たちが英語でショートトーク!を行っています。 私が所属している研究室の特徴は国際化。学生にはなるべく国際シンポジウムで発表する機会を作り、留学生も多く受け入れています。私も台湾やアメリカなどの研究機関と共同研究を行っている他、今年は国際シンポジウムの共同委員長も務めました。「どんな進路を進むにせよグローバル社会を生きていく学生さんには、若いうちから多様な価値観への理解を深めてほしいと思っています。
♢ ESSENTIAL THINGS
会話をするだけでも面白い♪ 子どもと過ごす幸せな時間。
同じことを見聞きしていても、違う視点を持っているので、会話をするだけでも楽しい。女の子だから早熟なのか、服装に関しても生意気にアドバイスをしてくるんです。まるで友達みたいです。
♢ Key Item
毎年自家製の梅酒と梅干しづくり、コンビニおにぎりも梅干!
「やはり20代のころと比べると無理がきかなくなってきました。夏バテ防止には梅干が一番です。管理している圃場には約20品種の梅があります。毎年6月には自家製の梅酒と梅干しをつくっています。毎日1粒の梅干し、おススメです」
人と違う「変」な部分を、そのまま受け入れる環境が京大にはあります。無理に飾らず、そのままの自分で飛び込んできてください。私自身、人とのコミュニケーションが苦手な風変わりな高校生でしたが、京大で自分にマッチした研究室を見つけられたことで、ここまでやって来られました。個性を生かせる場所はきっとあります。自分の価値観を大切にして、周りに惑わされずに、自分の道を進んでください。