キャリアストーリーを知るOG社会人インタビュー
京大ありきの私の大学選び。
植物の学びを深めたいと思ったら、そこに農学部があった。
田中 美澄枝 TANAKA Mizue
農学部 森林学科 卒業
大学院 修士課程 修了
滋賀県立河瀬高校 卒業
滋賀県 出身
タキイ種苗株式会社 勤務
周囲の応援が私を突き動かす原動力に
私は、地元の公立中高一貫教育の高校に通っていました。クラブ活動は高校から始めたソフトテニス部で運動がしたくて入部しました。
得意な教科は国語、英語、生物でした。文系科目の中で、生物が好きだったのは、小さいころから植物が好きだったことと、学外で続けていた、ボランティア活動(子どもたちと野外活動を行う等)が影響しているのかもしれません。とにかく植物など生き物の仕組みに興味があり、生物が得意な科目になりました。京都大学への進学を意識し始めたのは、高校に入ったころで、冗談交じりではあったのですが「私、京大にいくから!」と公言していました。高校3年生の頃には、本格的に目指すことになりました。友達も先生もみんな本当に応援してくれました。周りは、得意科目が国語と英語だったこともあり、文系に進んだほうがいいと思っていたようですが、興味を抱いていたのは植物だったので、オープンキャンパスも迷わず理系の学部を選びました。周囲の応援が私を突き動かす原動力になったと感謝しています。数ある学部の中から農学部森林科学科を第一志望に決めたのは、植物が好きだったということはもちろんなのですが、森を背景に笑顔で集う学生が表紙のパンフレットに心惹かれたという部分もあります。
自由で、恵まれた学びの環境
入学して、学びの環境がとても自由であるということを実感しました。森林科学科の実習で山に入り、片っ端から生えている植物を先生が解説されるという授業があるのですが、道沿いに生えている木の名前や見分け方などを全部細かく教えてくださるので、メモを取って聞き歩きます。山頂まで登ったところで、「はい、これは何の木か名前を答えなさい」と枝を見せられるので、みんな真剣そのものです。私は幼少期に野の花図鑑に載っている植物をすべて覚えていたこともあり、記憶が蘇り本当に楽しかったです。また、私はウィンドサーフィン部に所属していたので、放課後は琵琶湖上で風を感じながら帆を進めていました。京都大学は、自由で、恵まれているのは学習環境だけじゃないと思いました。
変な植物を研究したい。
かなえてくれた熱帯林環境学研究室
1回生では一般教養がメインですが、2回生では先述のように少しずつ実験、実習などの専門の学びが増えていきます。3回生のうちに所属したい研究室を決めておき、4回生から配属になるのですが、私はどうしても変わった名前や一般的な目線で「変な」といわれる植物の研究がしたかったので、迷わず「熱帯林環境研究室」を希望しました。そして、念願かなってタイを調査地として「着生植物」についての研究に取り組みました。土壌に根を下ろさず、他の木の上や岩盤などに根を張り育つ植物のことなのですが、京大は学びたい学生の希望を支援する制度や機会、学内のプロジェクトに本当に恵まれており、私はこの研究に集中して取り組み、大学院修士課程まで進むことができました。
今、ふりかえって思うこと。そして、これからの私。
私は今、野菜・草花・牧草・芝草の種子などを研究開発、生産、販売をするタキイ種苗株式会社という企業で、技術(研究)系の一般職という立場で植物の交配作業に従事しています。同じ植物を扱う分野ですが、大学での研究は野生植物でしたから、人が種をまき、育て、作り上げる植物は私にとってはやったことのない領域でした。普通なら不安に感じるかもしれませんが「なんだかそれもおもしろい」と入社を決めました。自生植物ばかり研究してきた私でしたので、入社直後は予想どおりわからないことだらけでしたが、先輩や上司の指導のおかげで、入社3年目の今は知識や技術向上など成長できたと感じています。種一つに未来の可能性があるということがわかり、すごいと思いました。同じ仕事をするなら、楽しいほうがいいと思います。もちろん、うまくいかない時もありますし、落ち込む時もあります。それも経験とポジティブにとらえて、次のステップに進むように心がけています。
上司・同僚からの一言
田中美澄枝さんは、「新品種の育成」という研究農場のミッションをスタッフ職として補助的に支えてくれています。その業務範囲は交配業務、種子関連業務、調査におけるデータ採取から分析・整理まで多岐にわたり、我々ブリーダーが大いに頼りにしている存在です。
「補助的に」とはいうものの、その働きぶりは決して「指示待ち」ではありません。 自らのアイデア・工夫により、常に業務の効率化を意識しており、我々が尻を叩かれる場面も少なくありません。今年からは農場外への出張もあり、さらに業務の幅が広がりましたが、前向きに取り組んでくれています。私としては田中さんの今後のさらなる活躍と成長を期待しているところです。』
新しい種を開発したい
たとえば、「雨風に強い野菜を作りたい!」という課題に基礎研究は欠かせません。タキイ種苗(株)は植物の種一つを丁寧に研究することにこだわっています。これからも、基礎研究へのこだわりに私も深く関わり、さまざまな交配の研究かつ安全な品質管理を担うことにより、自分たちが開発した「新しい種」という一つの商品化につなげていくことが、私が自分に託したミッションです。
こうやって勉強してました
私の場合、前の晩に翌日の授業のために、1時間でも30分でも時間のとれる限り、予習と復習はしていました。それを基に、学校での授業をしっかり頭に入れておき...が繰り返しの毎日でした。基本的には学校でそろえた問題集を各教科ごとに「今日はここまで」とか「この問題集は2ヶ月で終わらせるぞ」と自分なりに目標を決めていました。自分で決めたノルマをやりきったら、達成感が味わえます。それが楽しい。それで、その問題集が物足りなくなってきたら、本屋へ足を運んで、次の段階の問題集を買ったりしていました。
そうはいっても、けっこう飽き性なんで、同じことの繰り返しに煮詰まって、その日の気分で自分のノルマを緩くしたりしたこともあります。志望校合格実現につなげるため に、続けることが大事です。そんな日があっても良し、そう自分に言い聞かせて、翌日はさぼった分、頑張りました。
進路選択を控えた高校生のみなさんに私が伝えたいことは、ただ一つ。“好きなものを大事にしてほしい”ということです。何事も楽しくないと続きません。私は高校時代、漠然とながら植物に興味を持っていましたが、森林科学科で多くの知識を学んだことで、単なる興味を自分の強みへと変えることができました。ぜひ、みなさんも今のうちに自分の好きなもの=興味を見つけて、それを大事に深めていってほしいと思います。