キャリアストーリーを知るOG社会人インタビュー
生物の研究に
生涯ずっと関わり続けたい
阪井 裕美子 SAKAI Yumiko
理学部理学科 卒業
大学院 理学研究科生物科学専攻 卒業
四天王寺高等学校 卒業
大阪府 出身
シスメックス株式会社 勤務
幼い頃から生物が好きでした
中学時代は生物部でしたが、生きもの係といった育てる要素は少なく、活動は教科書が基本の実験がメイン。私は単純に生き物が好きというよりも、教科書に学ぶ生物学に心惹かれ、自然な流れで得意な科目は理科でした。生物を好きになったきっかけは、テレビで毎週見ていた生き物の生態や特長を細かく掘り下げて紹介する番組との出会いでした。楽しみながら学べることはとても興味深く、おもしろいと夢中になって観ていました。子供の時に興味を抱き、遊び感覚で学んだことすべてが、今につながっているのだと思います。
実は、大学受験
科目は物理と化学
「生物に惹かれていたあなたが、なぜ高校時代は物理と化学を選択したの?」と不思議に思われることが少なくありません。ただ進学校ということもあり、受験戦略も含め自分なりに将来の予測を立て、生物を深堀りするのは大学以降にしようと考えました。不安もありましたが、「将来、生物の学びを進めるにしても、物理は基礎としてしっかり学んでおいたほうがいいよ」という助言に背中を押され、物理と化学を選択履修しました。今振り返ると、この選択はその後、理学部で学ぶ上で本当に良かったと思っています。幅広い学問分野が同居する理学部で、学びの対象を最大限に広げることができました。
数ある大学の中から、京都大学を目指そうと思った理由
オープンキャンパスは大阪大学や神戸大学等々、いろいろな大学に行きました。ずば抜けて京都大学は自由な雰囲気で、そこがすごく魅力的でした。また、先生方が高校生の質問に対して「それ、おもしろいね」と座談会形式で対等な目線でずっとつき合ってくださっていました。オープンキャンパスの時点で「あ、素晴らしい環境だ」と確信しました。その後私は、博士課程まで進みますが、サイエンスに関して先生方は学生と対等にディスカッションしてくださるので、フラットな関係性というか、気軽だけど真剣に話をしていく中で新しい知識を得られる、それが京都大学の魅力の一つだと感じています。
いざ入学。理学部は女性が1割
女性は少なかったです。わずか1割でした。私が入ったときも300人中約30人ですね。6クラスに分かれますので、平均大体5人です。しかし、女性が少ないからといって過ごしにくいと思う事はありませんでした。私は、女子校出身だったので、女子校から男子校に入ったみたいな感じはありましたが、特に男だから女だからといってという性差の部分もないし、男の子に対して物怖じして何も言えないということもなかったです。理学部ということもあったかもしれませんが、多様な人がいて世界が一気に広がった感じがしました。社会にでた時もいろんな方がいると感じましたが、その理学部での経験が生かされていると思います。
生物の学びに明け暮れた大学、大学院の日々
生物を学びたいと純粋に思い入学を果たしましたが、生物の体の成り立ちは、神の領域というか少し怖いという感情を抱いていました。しかし理学部の阿形先生の授業を聞いて、考え方が180度変わりました。からだづくりの仕組みは単純だけれど、ものすごく美しい。そして、それを構成する細胞ひとつずつに、また魅力がいっぱい詰まっている。そう思うようになりました。その後の大学院では、植物の表面に存在する気孔というガス交換の器官がどのように発生するのか、その分子機構について研究しました。植物も動物もはじめは一つの受精卵で、そこから多様な細胞がどのようにできるのか、ということが興味の対象でしたね。毎日、顕微鏡とニラメッコしていたことが懐かしく思い出されます。
今、ふりかえって思うこと。
そして、これからの私。
大学から修士課程を経てドクターの道に進んだのは、やり始めた研究を最後まで、まとめあげたいという強い思いがありました。先述の通り、とても魅力的な大学ですから、卒業後も大学院に残って自分の興味を追究するという道もありましたが、次第に、自分の生物の研究が世界中の人々に広く貢献できるものにつながってほしいと強く望むようになり、今の会社に入社しました。現在入社2年目になりますが、研究開発の一翼を担っていけるよう、今後も力を培っていきたいと思います。
上司・同僚からの一言
阪井さんの第一印象は“志が高い”。弊社は臨床検査の会社として、血 液を対象とした細胞計測を中心にビジネスを展開していますが、研究 所としては、細胞、遺伝子、タンパクそれぞれについて新しい測定技術 を日々研究しています。細胞は顕微鏡で見えるし、数えることも可能で す。遺伝子は確立された精製・増幅方法があるから分析しやすい。で も、タンパクは見えないし、形もわからない、数えられない、千差万別 ......分析対象としては大変難しい分野ですが、さまざまな技術プラット フォームがある中で「これからはタンパクだと思う」と、一番困難な測定 技術の道をあえて選んだところに、彼女の志の高さを感じています。
めざせ! 再生医療
再生医療にチャレンジしたいと思います。
近年盛んに大学、研究機関で取り組まれていて、たくさんの成果が挙がっていますが、医療のひとつとして普及していくにはまだまだ課題があり、それを克服するのに貢献したいというのが将来の夢です。再生医療関連のプロジェクトは数々スタートしており、私も移植前検査法の開発など、いくつかに同時並行的に参画しています。プロジェクトを進めることは大変やりがいがありますが、先輩方のように自ら起案をして動かしていけるように成長できたらと思っています。
こうやって勉強してました
「優先順位をつけてやること」を意識して勉強をしていました。まず事前に計画を立てること、これが自分のスタイルでした。例えば、夏休みなら一日一日をどのようなスケジュールで時間を費やすのか、先に決めて、あとはそれに沿ってやっていくだけ、とはいっても、絶対うまくいきません。テスト直前になって「絶対終わらない~」となったとしても、そこは冷静沈着に「じゃあどこからやるか」と、ここでも優先順位をつけることを実践します。宿題の量も多く、テストの範囲も広かったので、そうやって優先順位をつけて、しっかり勉強したところと、時間がなくてやれなかったところを自分でわかるようにしておきます。やっていないところがテストに出て点数が取れなくても、落ち込む必要はありません。そうして過度なプレッシャーをかけずに、一歩ずつ積み重ねていくことが合格につながったとふり返って思います。基本的には、学校の授業をしっかりと頭に入れることと、わからないことあったら先生に質問しに行くことも大切なことだと思います。
毎日、授業やテストや部活動で忙しいと思いますが、受験に関しては“自信を持って受験会場に着席する”ことを目指して頑張って下さい。自分が自信を持ってそこに座れたら、もういけたも同然だと思います。そのためには、自信がつく勉強方法をみつけて、やり切ったと思えることが大事ですね。ライバルたちを目の前にして、一瞬ひるんでしまいそうになりますが、雰囲気にのまれない、周囲の言葉に惑わされない。最後まで不安なのはみんな同じ。これまで一生懸命やってきた自分を信じて、今までの努力を糧に受験に臨んでください。