キャリアストーリーを知るOG社会人インタビュー
地元の海風に吹かれて、紡ぐ音。創作意欲をささえるのは京都での日々
佐々木 恵梨 SASAKI ERI
総合人間学部 卒業
福岡県 福岡県立東筑高等学校 出身
シンガーソングライター
バイオリンを3歳で習いはじめてから、音楽はずっと私のそばにありました。これほど夢中になったものはほかにありません。その熱意がぐっと深まったのは中学のころ、アメリカのロックやポップスとの出会いでした。バイオリンやピアノを楽譜の指示どおり演奏することに、当時はすこしの堅苦しさを感じていたのですが、楽譜には落としこめないロックの表現に、「音楽はこんなに自由なんだ」と衝撃を受けました。
どっぷりと音楽漬けの大学生活
高校は進学校で、朝から夕方まで、さらには夏季休暇も勉強漬け。心身ともに窮屈で体調を崩したことも。息抜きは春の文化祭。校則の厳しい高校でしたが、この日だけはバンド演奏が許されていたんです。人前ではじめて歌ったのはこのときでした。
「なにを研究してもいい学部」という評判を聞いて、「それなら音楽もできそう」と総合人間学部に進学しました。勉強漬けの高校時代の反動で、音楽一辺倒に(笑)。軽音サークルに入ってバンドを組んだり、ライブハウスでアルバイトをしたり、四六時中音楽にふれる時間を過ごしました。
作詞・作曲にはじめて挑戦したのも大学時代です。所属サークルでは年に1回、所属バンドのオリジナル曲だけを集めたアルバムを制作します。私も仲間に加わろうと、鼻歌でメロディーをつくってみたのです。オリジナル曲を引っさげて、複雑な構成やリズムを駆使するポストロック系のバンドを組んで、活動しました。パソコンで音楽制作をはじめたのもこの時期。当時のバンドメンバーとは、いまも共同で作編曲をする仲です。ふり返るといまの私につながるたいせつな時間でした。
生み出した音がだれかに届くよろこび
そのうちにあっというまに就職活動の時期に。社会に飛び込むイメージができずに悩むなかで、好きなことに的をしぼって挑戦してみようと、1年間休学して音楽を仕事にする道を探りました。レコード会社に音源を送ったり、曲を作ってコンペに挑戦したり。「Pausing」は、そんな迷いと焦りの真っ只中で書いた曲。歌詞や曲から暗い印象を受けると思いますが、将来が不安だった、当時の心境そのものなんです。
さいわいにも縁がつながって音楽事務所に所属が決まり、卒業後に上京。歌手、作詞・作曲家の道を歩みはじめました。2018年、TVアニメ「ゆるキャン△」のエンディングテーマへの起用をきっかけに、より多くの方に楽曲を聴いていただく機会に恵まれ、感想をいただくことも増えました。楽曲が私から遠く離れて、だれかの心に響いているのは不思議でうれしい体験です。
音楽を仕事にする醍醐味を感じるいっぽうで、好きだからこそ譲れない音楽へのこだわりと、求められる音楽とのジレンマに頭を悩ますことも。心がけているのは自分に嘘をつかないこと。自分らしい活動ペースを模索できたらと、2021年に拠点を地元の福岡に移し、フリーランスとして活動をはじめました。都市のせわしなさから離れて、時間の流れを感じて暮らす、そのリズムでこそ生まれる音楽があると実感して、いまは新たな表現に燃えています。
出身高校は「進学が当たり前」の環境でした。進学に後悔はないのですが、進学以外の道もほんとうはあったんだろうと思うことがあるんです。他者に示された道であっても、選択の責任は自分にふりかかる。だったら自分の思う選択をするべき。あなたの心をたいせつにしてください。
おすすめの一曲
「BRITISH ROBOT」という曲の歌詞には、「ゲノム」や「ポスドク」などの言葉を登場させています。京大出身だからできた曲かもしれません。作曲には、京大時代の友人も参加しています
高校生のみなさんに
手に取ってほしい作品
『ちっちゃいおっちゃん──笑って学べる心のおべんきょう』尾崎里美 著(カナリア書房)
人生をあきらめた青年が、自分の心に住む「ちっちゃいおっちゃん」と出会い夢と使命に気づく物語です。潜在意識や心のことがわかりやすく書かれていて、大学生のころに読んでとてもいい衝撃を受けました。いまでこそよく耳にする「自分を愛する」という考え方が浸透する前、そうした考え方とはじめて出会った本です。いま読んでもすてきな本。すべての人におすすめです。