キャリアストーリーを知るOG社会人インタビュー

レールの上を歩まない私を受け入れてくれた京大の懐。「私だけの経験」が未来を築く礎に

小林 佳代 KOBAYASHI KAYO

京都大学医学部人間健康科学科 卒業
京都市 京都教育大学附属高等学校 出身
株式会社 日本ケアサプライ(三菱商事株式会社から出向)

 京都で生まれ育った私にとって、京都大学はずっと憧れの存在でした。保健師である母親に「資格を持っておくとよい」と勧められ、人と関わることが好きだったこともあり、京大医学部の先端看護科学コースを第一志望に据えました。
 海外での暮らしに憧れて、高1の夏から10か月間アメリカへ留学。日本の勉強に遅れを取り、数学の試験で0点をとったこともありましたが、「受験勉強にはフライングもスピード違反もない」と帰国直後から受験勉強を開始。高1の範囲から復習しなおしました。

大多数とは異なる道を選ぶ決意
 大学時代の思い出は、よさこいサークルの活動と看護実習です。1、2回生はサークル活動に熱中し、引退後は病院実習に励みました。実習を進めるなかで、「自分は看護師に向いていないかもしれない」と感じるようになりました。それは、実習が楽しかったからです。365日24時間安定した質の高いケアを提供することが求められる看護師にとって、えこ贔屓や自分の色を出しすぎることはあまり望ましくありません。一人の患者さんだけを毎日担当できる実習はやりがいを感じられましたが、毎日交代制で異なる患者さんを受け持つ仕組みのなかでは自分らしく働けない、と一般就職を決意しました。それでも国試までモチベーションが一度も落ちなかったのは、異なる道に進もうとする私を応援してくれた友人や先生の存在です。大学での経験やつながりは私の宝物です。

「京炎 そでふれ! 彩京前線」というよさこいサークルに所属し、日本各地のお祭りでオリジナル演舞を披露。夜遅くまで会議や練習を行い、副代表としてチームづくりに励んだ。「ときにはぶつかり合いながら、チームとして1つのものをつくりあげるという経験から多くのことを学びました。喜怒哀楽を共有しながら駆け抜けた、充実した時間だったなと思います」

未来は変わりつづけるほうが楽しい
 自己分析をくり返すなかで、「なにを」扱うかよりも「だれと」働くかが自分にとって大切だと気づき、海外でも広く事業を展開する総合商社への想いが強くなりました。しかし、看護学コースから一般就職をするのは少数派で、なかでも商社への就職例はほぼありませんでした。情報が少ないなかでの就職活動に戸惑いもありましたが、「自分にしか伝えられないこと」を心がけました。たとえ同じようにサークルの副代表や看護実習などを経験していたとしても、自分が感じたことや考えたことは私にしか話せません。ありのままの自分を自分の言葉で伝えられるよう面接に挑んだことが、いまにつながっているのかなと思います。
 ヘルスケア部配属になり、現在は福祉用具レンタル卸事業に携わっています。入社当初は、この業界で「お金を稼ぐこと」に違和感がありましたが、営利企業の商社だからこそできる事業があり、それが社会の課題解決につながるのだと信じています。
 現場から少し離れたビジネスサイドからヘルスケア業界を捉える立場になって意識するのは「病院」という非日常的空間で日常生活を送っている方の存在です。中にいると病院が非日常であるというのを、外にいると日常生活が営まれているというのを忘れがちです。実習という貴重な経験を通じて得た気づきは風化させず大切にしたいと感じています。
 総合商社という職業柄、今後ヘルスケアとは無関係の部署への異動もあると思います。むしろいろんな業界やポジションで経験を積みたい。目の前のことに一所懸命取り組みながら、興味関心の赴くまま、ひたむきに挑戦したいです。

看護師国家試験後に学部の仲良いメンバーたちと。「テスト期間は図書館でいっしょに勉強したり、誕生日はみんなでお祝いしたりと思い出がたくさんあります。現場の第一線で活躍している友人がいることは、私にとって強みでもあり誇りです」
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休日のすごし方

興味の赴くまま、まずはやってみる!
アンテナにひっかかったことはまず「やってみる!」が信条。社内プログラミング研修や美大の社会人向けプログラムなど興味の赴くままに参加。長期休暇にはフルマラソンに挑戦したりダイビングに行くことも。

高校生のみなさんに
手に取ってほしい作品

『ケアとアートの教室』東京藝術大学Diversity on the Artsプロジェクト 編 (左右社)
本屋で偶然見つけた「アート×福祉」というテーマがぶっ刺さり、私が受けないでどうする! と受講を決意しました。「なにを」と同じくらい「だれと」学ぶかが大事だと感じていますが、意図的には選べません。与えられる縁だからこそ、思い立ったタイミングを大事にしています。

『ライオンのおやつ』小川 糸 著( ポプラ社)
生きているかぎりかならず死ぬ。寂しいような、でもじんわりとこころが温まるお話。ここ最近でイチオシの小説です。