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子育て世代の生の声 ~みんなどうしてる?~
育児、介護をしながらの、日々の研究活動のシーンでは、いろいろな悩みが生じると思われます。
ここでは、男女共同参画推進センターが提供する情報、部局によるサポートなど、京都大学における現状と事例を共有します。是非みなさまのご意見をお寄せ下さい。
「ワンオペ」での子育てと研究の両立
ニュースレター第98号掲載(2021年9月15日)
大学には単身赴任生活をしながら、あるいはシングルマザー/ファザーとして研究、仕事、育児に日々奮闘している人たちも少なくありません。ワンオペでの子育てと研究の両立は、体力的にも精神的にも負担が大きくなります。使いやすくアクセス可能な制度やサービスがどれだけ整っているかが、研究を続けていけるかどうかを左右する重要なカギになります。
寄稿者自身もワンオペ子育てを経験した一人ですが、ファミサポ、民間のシッターサービスなど、使えるサービスを駆使して何とかやりくりをしました。子どもが病気をしたときは京大病児保育室「こもも」にお世話になりました。満室であったり、条件を満たさず利用できない場合で仕事が休めないと判断したとき、あるいは保育園や学童が利用できない土日祝日に重要な仕事が入ったときには、迷わずベビーシッターを利用しました。家事代行を頼むなどし、子どもとの時間をできるだけ確保しようとも心がけました。
その代わり、特に子どもが小さい頃は、給与は生活費とサービス料にほとんど消えていくような状況でした。ワンオペ子育て家庭で、研究や仕事を続けるためにサービス料を支払い続ける必要がある場合、これが経済的な負担となってキャリアが妨げられるリスクは大いにあると考えられます。「ベビーシッター利用育児支援」(注1 )は教職員(常勤・非常勤)に限られた制度ではありますが、「ひとり親家庭である場合」「配偶者が就労または病気療養中であり子の保育ができない場合」に、在宅保育サービスの利用料金の一部が助成されるものです。少なくとも一部の人々には、負担の軽減になるのではないかと思います。もちろん、各種サービスを利用しても、やはり仕事はある程度、選ばざるを得ないこともあります。万一帰れなくなることが予想されるような日帰り出張は引き受けること自体が躊躇され(注2 )、遅くまで長引く会議への出席も困難になります。
このように、時間や金銭的な制限の多い毎日を送っているとき、研究を続けていくうえで何より支えになるのが、職場での周囲の人たちからの理解でした。寄稿者の場合、会議などが長引きそうなときには当たり前のように定刻に帰れる雰囲気があり、急な休みや遅刻などにも同僚や上司が理解を示してくれたことは、大きな支えでした。
研究者としてのキャリアを続けていくには、家族からの真摯な理解や応援も重要になります。一般企業に勤める夫と別居し、ワンオペで家事・育児をしていた知り合いのフィールドワーカーは、子どもが小さい間の数年間、お盆や正月休みなど夫が休める時期に合わせて1 週間程度のフィールドワークを続けていたそうです。夫と双方の実家に数日間ずつ、子どもたちを預けて実施したフィールドワークの時間は、短いながらも、研究には欠かせない思索の時間であり、これが大いにリフレッシュになったそうです。
本コラムで強調したいことは、サポートや理解を求める学生や教員は研究への強い意欲があるからこそ、今でも研究環境に身を置き、家庭でも日々奮闘しているということです。大変な状況におかれている人に限って、公言せず、ひとり負担を抱えこむという事態もしばしば見受けられます。もしかしたら、周囲にサポートや理解を求めることで「研究ができない」「自分勝手だ」と受け止められてしまうのでは、といった懸念があるのかもしれません。様々な事情や状況におかれた人々が、研究への意志を保ち、キャリアを形成していけるような環境・体制が整備されていくことを願っています。
((文責 育児・介護支援事業WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)
注1 )https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/care/babysitter/
注2 )奈良先端科学技術大学院大学には「出張時の保育支援」という制度があります。
https://www.naist.jp/gender/contents/support/shuchou_support/index.html
なお、京都大学の男女共同参画推進センターが提供しているおむかえ保育も、午後10時まで利用ができます。