News Letter 2021.11.15 第99号
「保活情報交換会」オンライン開催
9月30日(木)12時15 分より、昨年度も好評だった育児・介護支援事業ワーキンググループ主催の「保活情報交換会」を、本年度もオンラインにて開催しました。
「保活情報交換会」は保育園入所を目指す人やその他研究者の保活(子どもを保育園に入れるために保護者が行う活動)に関心を寄せる人たちのために企画されているイベントです。大学構内にある朱い実保育園・風の子保育園の園長にも参加いただき、齊藤 真紀ワーキンググループ主査(法学研究科)の司会で進行されました。
まず、保活経験者である本田 晶子ワーキンググループ推進員(地球環境学堂)より保育園入園のタイミングや見学についての経験談とアドバイスがありました。さらに齊藤主査より京都大学における支援制度等の説明がありました。その後、各園長からコロナ禍での保育の様子や保活におけるポイントについてお話しいただき、令和4年度京都市保育利用申込みに関する情報も提供いただきました。引き続いて、事前に、また当日に参加者から寄せられた様々な質問に関連したやりとりがなされ、時間いっぱいまで盛り上がりました。約30名の参加のもと、保活について多くの情報共有が出来た大変有意義な時間となりました。ご参加いただきました皆様ありがとうございました。
2021年10月現在、新型コロナウイルス感染のリスクなどから保育園へ子どもを預けることを控える保護者が増加し、また、少子化の影響もあり、0 歳児の年度途中入所の空き枠の状況は例年とは大きく異なっているようです。
一般的には入所しやすくなったようですが、園により状況が異なるため最新情報をチェックしてください。
全学共通科目(後期)「ジェンダー論」
教育支援事業ワーキンググループが担当する全学共通科目(後期)「ジェンダー論」が、10月5日(火)より開講されました。後期の授業は10 月22 日より対面となりましたが、この講義はオンラインにて実施をしています。
履修登録には600 名を超す申込がありましたが、人数制限があり抽選の結果295 名の履修登録となりました。本年度も一部となりますが講義動画を公開する予定をしています。
第16回女子中高生のための関西科学塾
「女子中高生のための関西科学塾」は、大学の設備を使っての実験や、理系の先輩たちとの交流・講演などを通して、理系の世界の幅の広さや奥の深さ、その道に進む魅力を実感できる事業を通年で行っています。京都大学、大阪大学、神戸大学、奈良女子大学、大阪府立大学、大阪市立大学の6大学が参加し1年ごとに幹事校を交替しながら、その年度の関西科学塾を運営しています。
第16回目となる今回はオンラインでの科学塾となり、京都大学では10月24日(日)に中学生を対象に開催されました。実習は理学研究科、農学研究科、情報学研究科の3グループで行われ33名の参加がありました。
女子高生・車座フォーラム2021
11月7日(日)9時30分より、オンラインによる「女子高生・車座フォーラム2021 」を開催しました。
高校生99 名、保護者11 名の参加がありました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
今回で16回目の開催となるこのフォーラムは、女子高生に京都大学での学生生活や研究者の仕事を知ってもらうため、毎年開催しています。これまでは12月下旬の開催でしたが、11月初旬に開催としたことで高校3年生からも多数の参加申し込みがあり、申込当日に定員を越える申込となり関心の高さが伺えました。また、これまで以上に全国各地より参加がありました。当日の詳しい内容につきましては、次号の第100 号とHP にてお伝えします。
女性教員懇話会セミナー
第3回セミナー「大学でのハラスメントの実情」(9月14日12時10分-13時)では、国本 聡子弁護士を基調報告者とし計7名の弁護士にご講演と質疑応答を行っていただきました。大学はハラスメントが生じやすい環境であり大学にはその防止のための適切な措置を講じる義務があること、多くの大学で一定の制度は設けられているものの運用面で課題があること、法曹関係者を積極的に起用した制度を整備した他大学の例等をご説明いただきました。
第4回セミナー「京大における女性の平等参画実現に向けて」(10月13日12時10分-13時)では、「京都大学男女共同参画推進アクションプラン( 2022年度-2027年度)」の策定作業が進んでいることを踏まえて、深澤 愛子教授(iCeMS)から、名古屋大学の取組みについて紹介していただきました。名古屋大学では、大学の研究力を高めるべく運営戦略の一環として非常に充実した育児支援等の各種施策を進めていることに、参加者から感嘆の声があがっていました。つづいて和久井 理子教授(法)が京大の現状・課題を概観し、参加者間で意見交換を行いました。
研究者の妊娠・出産・復帰その① 妊娠の報告と対応
研究・教育等で忙しくしている中、初めて妊娠した場合、初めて経験する体調の変化とどのようにつきあっていけばよいのか、業務や研究活動をどうするか、周囲の人へいつ、どのように報告すればよいか等悩みは尽きません。本コラムでは、これから数回にわたり、妊娠された本人に役に立つと思われる(注1)、また、職場で身近な人が妊娠された、あるいはされる可能性がある場合に参考になりそうな情報をそのような経験をした者の目線でお伝えしていきたいと思います。
今回は、いつ、どのように報告するかと、職場はどのように対応すべきかと、職場側の対応について取り上げます。
産婦人科で妊娠を告げられ、自治体で母子手帳を交付されると妊娠生活が始まります(注2)。妊娠が判明しても、その後起こりうるさまざまな事態を考えれば、直ちに職場に告げることを躊躇されることもあるでしょう。しかし、健診を受けるために休んだり、体調の変化に応じて業務内容を見直してもらったりする必要が出てきます。また、妊娠は、どのように健康な人であっても、順調に経過するとは限りません。出産予定日が確定する頃には悪阻(つわり)がはじまり思うように仕事ができなくなったり、切迫流産のために突然自宅・病院での安静が必要になったりする場合もあります。また、いずれ産休に入り、職場から一時離れることにもなりますので、職場には、代替人員の手配等の対応に向けた準備の時間が必要になります。そのため、妊娠が判明したら、早めに職場の責任者に報告し、さまざまな事態に備えましょう。万一身動きがとれなくなった場合に備えて、業務の引き継ぎや自宅の仕事環境の整備なども併せて行っていくとよいでしょう。報告は、まず、職場の責任者や仕事・業務で直接かかわる人に、次いで少しずつ周囲の人に、とすることが多いようです。妊娠出産の可能性およびその場合の仕事の希望などは、直接関連する上司には普段から相談をしておくと、いざという時に対応もしやすくなります。
一般企業とは異なり、大学の研究職においては、この種のことを誰に相談・報告するべきなのかが明確でない場合もあります。しかし、妊娠初期は心も体もデリケートな時期で、適切な対応や配慮が求められるともに、妊娠の経過に応じた業務上の対応も必要になります。日頃から、妊娠が分かったら誰に報告するのかなど、職場としてそのような事態を予定していることを周知し、構成員の相談や報告のハードルを下げておくことが望まれます。
一方、妊娠の報告を受けた職場の責任者は、慎重に対応する必要が生じます。妊娠はデリケートな個人情報であり、無事に出産を迎えられるその日まで何が起こるか分かりません。本人の意思に反して、業務上必要な範囲を超えてその事実を第三者に告げることは控えましょう。また、妊娠・出産に関わる学内の制度について、事務担当者に情報提供を受けるよう助言をしましょう(注3)。
妊娠をしたこと、妊娠中の時差出勤などの母性健康管理措置や深夜業免除などの母性保護措置を受けたこと等を理由に、降格等の不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。また、妊娠したことを理由に仕事や研究を辞めることを促したり、妊娠中の業務の軽減について不満を述べたりすることにより妊娠中の人が働き続ける環境を悪化させることはハラスメントに当たります(注4)。職場の責任者には、自らそのような行為をしないことはもちろん、そのようなことが行われないような職場の環境作りが求められます。
出産までの数か月間は、意外と短いものです。いざというときに慌てないように数か月先まで余裕をもって計画をたて、家族や周囲の人と相談しながら、お腹の子どもとの大切な時間を健康にまた穏やかに過ごしていただけることを願っています。また、職場の同僚や責任者にあたる方々においては、妊娠した女性が相談しやすい雰囲気を作っていただけるとありがたいです。
(文責 育児・介護支援事業WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)
注1)妊娠・出産にかかる法制度について、以下のウェブサイトでは、働く女性の視点で整理されています。
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/ninshin/
注2)以下のウェブサイトでは、京都市の委託を受けて、公益社団法人京都府助産師会が、不妊・不育症、思いがけない妊娠等に悩む人たちに向けて、情報や相談窓口を提供しています。https://www.ninshin-hotnavi.com/
注3)学内の支援制度についてのパンフレットがございます。
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaaboutgender_equalitydocuments201908.pdf
注4)「 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとなり得る言動例について」
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaaboutfoundationhuman_rightsharassment
documents2016gendourei.pdf
をご参照ください。
過去のコラムは、こちらでご覧いただけます。https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/column/mina/
連載: 研究者になる! -第86回-
人間・環境学研究科・准教授 中筋 朋
●世界各国のパフォーマーとともに演劇三昧
高校時代は病気で運動禁止の時期があったため、体育祭や遠足などの思い出は少ないものの、ピアノに夢中になり必死で練習したり、文化祭には友人とカジノをつくったり、屋
内ではエネルギッシュに過ごしていた毎日でした。当時はまだ自分の興味と勉強が結びつかず、漠然と認知哲学を学びたいという気持ちで、京都大学文学部へ入学しました。入学
後は学生劇団に入り、劇団の活動が開始する18 時になってその日はじめて大学に……ということも多々ある、不真面目な学生でした。劇団では、そもそも喋りながら動くということがとても難しく、自分が自分のからだをまったく把握していないことに気づき、その後コンテンポラリーダンスのワークショップに多く参加するようになります。夏休み中、ギリシア、ドイツ、アメリカ、フランスなどさまざまな国の先生に1 日中レッスンを受けたり、いっしょにパフォーマンスをつくったり、と非常に贅沢な時間を過ごすこともありました。第二外国語がドイツ語だったのにフランス文学研究室に進んだため、授業で読む文章にいつも手いっぱいでしたが、よき交換パートナーやその友人と過ごすことで新しい言語を身につけていく楽しさを経験することができました。
●哲学、科学……多角的方面から演劇にアプローチ
学部生の頃は、自分がダンスや演劇の世界で体験していることと、大学での勉強をかなり分けて考えていたので、全く違う研究をすることも考えましたが、最終的に、自分がからだ、意識、ことばについて体験したことを考えていくには、ことばを発しているからだと対峙する芸術である演劇について研究するのが一番良いように思えました。また、19世紀末のヨーロッパは、からだと無意識の問題を考えるうえで、おもしろいターニングポイントです。もともとはフランス現代演劇、その後、現代演劇をつくる大きな転換点となった19 世紀末の研究へ。人間の脳の仕組みがわかってくると同時に、私たちが「無意識」の影響を強く受けているということも注目されるようになった19世紀末の、「人間の内面の表現はどのようなものになりうるのか、そしてそれを身体で表すとどのようなことになるのか」ということを研究のテーマにしています。このことを考えるには、演劇そのものだけでなく、当時の哲学・科学、そしてそれがどのように生活に働きかけていたかを知ることが必要です。また、演劇作品や文学作品を見るにしても、その芸術的な価値を探るだけでなく、歴史資料として見る視線も重要になります。最近は、人間の思考が、どのように魔術的なものと非魔術的なもののあいだで螺旋を描いてきたかを考えるために、19世紀の小説や戯曲、そして演技実践について考えています。
●大切なのは体感・体験の知。自分のからだで実験し、自分自身をプロデュース
演技というものを通して気がついた「私は自分のからだの操縦が下手である」ということは、日常生活でもいろいろな「生きにくさ」を生んでいます。それに取り組むために、からだにアプローチして、その影響について考え、まわりの人たちともそれを共有していくうちに、大学院生になっていました。芸術を「している」人がまわりに多かったので、「それについて書く」ということには後ろめたさがありましたが、フランス留学でそのように「書く」「話す」ということも芸術と同じ意味でひとつの行為になりうるということがわかり、これをずっと続けていこうと思い、最終的に研究者になっていました。研究者は、研究をしていくと同時に自分をプロデュースする必要もあります。そのことを大変だと思うより、自由でよいなと思う気質だったことが現実的には大きかったのだと思います。考えてみると、私は「自分のからだで実験すること」が好きなようです。語学でもからだを動かすことでも、頭でわかることと、それができるかどうかは別の問題です。何かについて考えることや書くことは、この違いがわかりにくくなりがちですが、体感としてわかっているかどうかを置き去りにしないようにしています。また、「ニュートラルに、けれども個性的に」ということも心がけています。身体がもっている「個性」と、日常生活の蓄積でできたからだに負担をかける「癖」は大きく異なります。一見個性にも見えるこの「癖」を解放したあとに出てくる「個性」を大事にしたいと考えています。加えて今まで学んできたことをさらに進め、学問として広げていくことができるといいですね。