News Letter 2021.9.15 第98号
全学共通科目(後期)「ジェンダー論」10/5(火)開講
文学研究科 落合 恵美子教授の全学共通科目「ジェンダー論」が10月5日(火)より開講します。
現代社会に生きる女性や男性は、その性別(ジェンダー)ゆえに、どのような問題に直面しているのだろうか。その現実に多面的に光を当て、淵源を探ることにより、日常の中でジェンダーにまつわる問題に気づき、課題解決のための実践ができるようになるための基礎的知識を身につけることをめざした講義です。オムニバス講義のかたちをとり、学内外からゲストスピーカーを招き、さまざまな研究分野においてジェンダーが開くパースペクティブを示していただき、特に男性にとってジェンダー問題とはどのような意味をもつのかについても充実させた講義となっています。
2021年度全学共通科目(後期)「ジェンダー論」
■講義の時間:火曜日3限(13時15分~14時45分) ■講義の場所:Zoomによるオンライン授業
講師と課題
※センターホームページにて2020年度全学共通科目「ジェンダー論」の講義動画を公開しています。
https://cwr.kyoto-u.ac.jp/activity/ilas-seminar/
令和3年度第2期研究・実験補助者雇用制度 利用者決定
令和3年度第2期研究・実験補助者雇用制度の利用者は、18名(女性15名、男性3名)の方に決まりました。
研究・実験補助者雇用制度は、育児又は介護のために十分な研究・実験時間が確保できない研究者に対し、研究又は実験業務(注:事務及び教育関係の業務は支援対象外)を補助する者の雇用経費を助成する事業です。本事業は、女性研究者に限らず、男性研究者も対象となります。また、研究分野の文系・理系は問いません。年2回募集を行っており、補助者未定でも応募できます。
日経ウーマノミクス2021 シンポジウム
Are you ready? SDGsが拓く未来
7月13日(火)、日本経済新聞社主催の学生・高校生応援イベント「2021 シンポジウム Are you ready? SDGsが拓く未来」が大阪のハービスHALLにて開催され、併せてオンラインによるライブ配信も実施されました。京都大学も協力大学として参画し、入試企画課の協力のもと相談ブースを設置して高校生からの相談に対応したほか、大学・企業研究室紹介プレゼンテーションでは、磯田 珠奈子さん(理学研究科博士後期課程3年)が「植物の体内時計の 不思議」について発表し、SDGs座談会発表コンテストでは、川原 桜さん、中島 葵さん、矢島 咲紀さん(いずれも総合人間学部3年)による「そ〜じんs」が、「もっと多様性をもっと個性を」というタイトルで学生交流サークル「saKUra」(@saKUra_kyoto_u)の活動などについて発表しました。また、本学学生が「Cheers!」として、SDGs 座談会発表コンテストに参加する高校生のサポートを行いました。
女性教員懇話会 第2回ハラスメント問題研究会
「公平な調査の在り方について考える」
8月19日(木)12時10分より、飯島 奈絵弁護士はじめ計7名の弁護士にご講演、質問への回答等を行っていただきました。大学での調査結果が裁判所で覆された事例の紹介の後、調査の公平性を確保するためのポイントとして、事実認定への弁護士の関与、争点等を適時に当事者に知らせること、当事者に対する調査結果の開示、不服申立手続の整備、ハラスメント関係規程の見直し等をご説明いただきました。懇話会では、第3回ハラスメント研究会を9月14日(火)に開催し、10月もイベントの開催を予定しています。
詳細は懇話会HP(https://sites.google.com/kyoto-u.ac.jp/female/events)をご覧ください。
「ワンオペ」での子育てと研究の両立
大学には単身赴任生活をしながら、あるいはシングルマザー/ファザーとして研究、仕事、育児に日々奮闘している人たちも少なくありません。ワンオペでの子育てと研究の両立は、体力的にも精神的にも負担が大きくなります。使いやすくアクセス可能な制度やサービスがどれだけ整っているかが、研究を続けていけるかどうかを左右する重要なカギになります。
寄稿者自身もワンオペ子育てを経験した一人ですが、ファミサポ、民間のシッターサービスなど、使えるサービスを駆使して何とかやりくりをしました。子どもが病気をしたときは京大病児保育室「こもも」にお世話になりました。満室であったり、条件を満たさず利用できない場合で仕事が休めないと判断したとき、あるいは保育園や学童が利用できない土日祝日に重要な仕事が入ったときには、迷わずベビーシッターを利用しました。家事代行を頼むなどし、子どもとの時間をできるだけ確保しようとも心がけました。
その代わり、特に子どもが小さい頃は、給与は生活費とサービス料にほとんど消えていくような状況でした。ワンオペ子育て家庭で、研究や仕事を続けるためにサービス料を支払い続ける必要がある場合、これが経済的な負担となってキャリアが妨げられるリスクは大いにあると考えられます。「ベビーシッター利用育児支援」(注1 )は教職員(常勤・非常勤)に限られた制度ではありますが、「ひとり親家庭である場合」「配偶者が就労または病気療養中であり子の保育ができない場合」に、在宅保育サービスの利用料金の一部が助成されるものです。少なくとも一部の人々には、負担の軽減になるのではないかと思います。もちろん、各種サービスを利用しても、やはり仕事はある程度、選ばざるを得ないこともあります。万一帰れなくなることが予想されるような日帰り出張は引き受けること自体が躊躇され(注2 )、遅くまで長引く会議への出席も困難になります。
このように、時間や金銭的な制限の多い毎日を送っているとき、研究を続けていくうえで何より支えになるのが、職場での周囲の人たちからの理解でした。寄稿者の場合、会議などが長引きそうなときには当たり前のように定刻に帰れる雰囲気があり、急な休みや遅刻などにも同僚や上司が理解を示してくれたことは、大きな支えでした。
研究者としてのキャリアを続けていくには、家族からの真摯な理解や応援も重要になります。一般企業に勤める夫と別居し、ワンオペで家事・育児をしていた知り合いのフィールドワーカーは、子どもが小さい間の数年間、お盆や正月休みなど夫が休める時期に合わせて1 週間程度のフィールドワークを続けていたそうです。夫と双方の実家に数日間ずつ、子どもたちを預けて実施したフィールドワークの時間は、短いながらも、研究には欠かせない思索の時間であり、これが大いにリフレッシュになったそうです。
本コラムで強調したいことは、サポートや理解を求める学生や教員は研究への強い意欲があるからこそ、今でも研究環境に身を置き、家庭でも日々奮闘しているということです。大変な状況におかれている人に限って、公言せず、ひとり負担を抱えこむという事態もしばしば見受けられます。もしかしたら、周囲にサポートや理解を求めることで「研究ができない」「自分勝手だ」と受け止められてしまうのでは、といった懸念があるのかもしれません。様々な事情や状況におかれた人々が、研究への意志を保ち、キャリアを形成していけるような環境・体制が整備されていくことを願っています。
(文責 育児・介護支援事業WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)
注1https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/care/babysitter/
注2奈良先端科学技術大学院大学には「出張時の保育支援」という制度があります。
https://www.naist.jp/gender/contents/support/shuchou_support/index.html
なお、京都大学の男女共同参画推進センターが提供しているおむかえ保育も、午後10時まで利用ができます。
過去のコラムは、こちらでご覧いただけます。https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/column/mina/
「保活情報交換会」開催のお知らせ
育児・介護支援事業ワーキンググループでは、来年4 月入所を目指される方その他研究者の保活に関心を寄せる方のために、本年度も保活情報交換会を企画しました。保活経験者にその経験をご披露いただいたり、紙面ではお伝えしきれない情報を交換したりする場にしたいと考えています。関心をお持ちの方はぜひお気軽にご参加ください。
※「保活」とは、子どもを保育所に入れるために保護者が行うあらゆる活動・努力のことです。
【日 時】2021年9月30日(木)12時15分~13時30分頃(Zoom によるオンライン開催)
途中入退室自由 お子さんの声や乱入歓迎
【対 象】京都大学の教職員および学生
【申込方法】参加申込みは以下のサイトからお願いいたします。
https://docs.google.com/forms/d/1cxzHOHi1VVBNtXE6ED
nteccfrnA6Qm9q6x5ZGYtRhaA/edit?ts=61316e2c
(参加申込みには、kyoto-u.ac.jp が含まれるメールアドレスが必要となります)
連載: 研究者になる! -第85回-
医学研究科・准教授 竹之内 沙弥香
●出逢いによって導かれ実現した夢
高校では、個を大切にし、創造性豊かであることを重んじる「自主創造」の校風を、心ゆくまでエンジョイしたように思います。素晴らしい先生や友達に恵まれ、担任の勧めで
チャレンジした生徒会、3 歳から習っていたスイミングの延長で入った水泳部の活動や文化祭など、勉強そっちのけで青春を謳歌しました。あまりに高校生活をエンジョイし過ぎ
て、大学受験に危機感を感じ始めたものの時すでに遅し。幼い頃に流行ったアニメの主人公に憧れ、看護師になりたいと思いながらも家族の反対で文系コースに所属していた私は、1 年浪人するなかで、やはり自分の夢である看護師への道を目指すことを覚悟し、理系に転向しました。
京大医療短大、米国留学や大学院を合わせると、長く多彩な学生時代を過ごしました。医療短大時代には、最終学年になっても就職活動をしていなかった私を心配して、担当の先生が面接し、ひそかに憧れていた米国のカリフォルニア州にあるホスピスへの留学を後押ししてくれました。その面接の帰り道、講義でそのホスピスを紹介してくれた先生にばったり出会ったこと、ゼミの指導教員であった恩師からも推奨を得たこと、両親が援助してくれたことで、留学の夢が現実になりました。米国の大学では、日本で学んだ看護や医療の知識を全部英語で学び直し、カリフォルニア州の看護師免許取得まで、ひたすら努力の日々でした。でもそこから得た、大切な人達との出会いや、念願のホスピスで看護師として働いた経験は、すべて私の宝物です。
●看護師の経験を活かして研究者に
米国のホスピス・緩和ケア病棟での仕事は、毎日新しい学びがあり、やりがいを強く感じていました。出来るものなら、このままずっとここで働きたいと思うほどでした。しかし、母国におけるナースの緩和ケア教育や倫理教育に、何か貢献できればと、5年間お世話になったSan Diegoの家族や仲間に別れを告げて、京大の大学院に進学しました。帰国後は、現場での看護に専念したいという気持ちが何度も頭をよぎりましたが、大学院で取り組んだ研究プロジェクトをやり遂げるために、研究者を目指しました。当時、アルバイト先の病院で、私が担当していた患者さんが、私の研究テーマについて、これからもっと大切になる領域だから頑張って欲しいと、幾度も励ましの言葉をくださったことも、研究者になる大きな後押しとなりました。
現在私は、病と共に生きる人とそのご家族に、看護師がどのような意思決定支援をすれば、患者の価値観を反映した医療・ケアを提供することができ、患者が満足して日々の療養生活を送ることができるか、より良い支援方法を検討し、多くの研究者と一緒にモデル開発に取り組んでいます。また、日本文化に即した倫理的看護実践と看護倫理教育を進めるために、国際研究や国内共同研究等を通して幅広い視点から考察を深めています。
●初心忘るべからず 叶えた夢をさらに大きく発展させるために
私生活では、看護研究者の立場から、妊娠・出産・育児の経験を経て多くの発見をしました。身体の生理的変化の不思議や生命の力強さ、Nursing(看護、授乳、育児)の素晴らしさを、実体験を通して学べる貴重な機会は、女性ならではのメリットだと感じました。
これまでに、子どもの怪我や病気で、急に仕事の予定を変更しなければならないことが何度もありましたが、それでも研究と子育てを両立できたのは、どんな時もあたたかく支えてくれた上司や同僚のおかげと深く感謝しています。大学時代からの付き合いの夫とは忙しいながらも、コミュニケーションを大切にして、家事・育児を分担しています。夫が私の価値観をよく理解してくれているから、仕事と子育ての双方を頑張れるのだと感じます。子どもの小さい頃は、困難な課題に直面しては試行錯誤する日々でしたが、大学の支援や周囲の協力のおかげでここまでやってこれたことは、本当に有難いことです。
子どもが少し大きくなった今は、成長をそばで見守りながらも、「初心忘るべからず」をモットーに、より一層教育や臨床研究に真摯に取り組んでいきたいと思っています。質の高い看護ケアを実践できる看護師の育成や、患者さんのwell-being の向上につながる研究を実施できる看護研究者の育成に尽力すると同時に、多くの医師や看護師に役に立ち、患者さんやご家族に喜んでもらえるような研究成果を、一つでも多く発表したいです。