News Letter 2021.7.15 第97号
「女子高生・車座フォーラム2021」11月7日(日)にオンライン開催
「女子高生・車座フォーラム2021 」を11 月7 日(日)にオンラインにて開催します。
京都大学男女共同参画推進センターでは、京都大学での学生生活や研究者の仕事を知ってもらうため、毎年「女子高生・車座フォーラム〜京都大学を知ろう 学生・研究者と語ろう〜」を開催しています。フォーラムでは、理系・文系それぞれにどんな研究分野や領域があるのか、なぜ今の分野を選んだのか、といった大学進学に関わる話をはじめ、試験勉強、進学後の大学生活、研究の面白さや苦労など、さまざまなテーマについての疑問に、学生や研究者がお答えします。
保護者の方々の疑問にも、学部生や大学院生がお答えします。昨年度に続き、今年度もオンラインで実施しますので、遠方の皆さんも奮ってご参加ください。
日 時2021 年11 月7 日(日) 9:30−12:30( 8:50 よりZoom 接続開始)
会 場オンライン(Zoom にて開催) ※先着順、事前申し込みが必要です
参 加 費無料
募集定員女子高校生100 名程度/保護者50 名程度
申込期間2021 年7 月12 日(月)9:00 〜9 月17 日(金)17:00 まで
参加条件や申込方法についての詳細はホームページをご覧ください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/rooting/kurumaza/
なお、京都大学の新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う活動制限のガイドラインhttp://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/foundation/coronavirus/における対応レベルが4 になった場合は中止とし、HP 上でお知らせします。
ILAS セミナー「ジェンダーと文学」開講
文学研究科 川島 隆准教授の2021 年度ILAS セミナー「ジェンダーと文学」が4 月13 日(火)より開講しました。
この授業では文学や映画など、言葉を用いたエンターテインメント作品を取り上げ、そこでジェンダーやセクシュアリティをめぐる問題がどのように表現されているかを講義いただきます。後半からは学生自身がテーマを決めて発表を行い、毎回活発な意見交換がなされています。
日程:4 月13 日(火)〜7 月27 日(火)
時間:毎週火曜日 5 限( 16:45 〜18:15 )
ベビーシッター利用育児支援
京都大学男女共同参画推進本部では、本学における教職員の仕事と子育ての両立支援を目的として、「ベビーシッター派遣事業割引券」を発行して、ベビーシッターによる在宅保育サービス事業を行う者が提供するサービスを利用した場合に、その利用料金の一部を助成しています。利用方法・注意事項等の詳細については下記URL をご覧ください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/care/babysitter/ (日本語)
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/eng/babysitting.html (英語)
メンター相談
京都大学男女共同参画推進センターでは、女性の先生方にメンターをお願いし女性の学生、院生、研究者の相談を受けています。「研究分野の選択で迷っている、研究を続けることに漠然と不安がある、研究分野を変えたい」など、研究上のことで困ったときはもちろんのこと、キャリアに悩んだりアドバイスが欲しいときなど、相談に対応しています。2021 年度メンターには理系61 名・文系31 名登録されています。
ご利用の際は下記URL をご覧ください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/consulting_rooms/mentor/ (日本語)
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/eng/mentoring.html (英語)
女性教員懇話会 第1 回ハラスメント問題研究会
「ハラスメントと指導・助言のボーダーラインを考える」
6月25日(金)12時10分より、第1 回ハラスメント問題研究会がオンライン開催されました。講師として大浦 綾子弁護士ほか6名の弁護士を招き、大学における具体的事案に即して解説をいただきました。本セミナーは3回シリーズで行われ、第2回8月19日(木)、第3回9月14日(火)に予定されています。(いずれもオンライン、12時10分から)詳細は、京大女性懇話会(https://sites.google.com/kyoto-u.ac.jp/female/home/)ホームページをご覧ください。
家庭内から始める男女共同参画
その② わが家のベストな分担の模索
男女共同参画の実現には、パートナーと同居しているのであれば,育児・家事の負担がどちらかに偏らないよう、協力し合うことが不可欠です。
送迎や炊事とは異なり、日々の細々とした、しかし不可欠な用事の負担の偏りは気付かれにくいものです。こうした「名もなき家事」の代表例は、トイレットペーパーの補充などですが(注1 )、子育て世帯では、保育園や学校に提出する書類の準備、子どもが小さいうちは、友だちとの予定の日程調整、日々の持ち物や宿題の確認なども含まれます。このような用事は、蓄積すれば、結果として多くの時間が割かれます。家族みんなで書き出してみれば、負担の偏りを共有するきっかけになったり、小さな心がけで減らせる家事がみつかったりするかもしれません。
大学の研究者の大半が男性で構成され、子どもをもっても、家事・育児を家族に任せ、昼夜を問わず研究その他の業務に没頭できた時代は過去のものとなりつつあります。少し以前は、わが国では、父親は外で就労して外貨を稼ぐかわりに家庭内外で自由に使える時間を持ち、家事・育児は母親が負担・責任とも負うことが当たり前であるかのように語られることが多くありました(注2 )。男性の家事・育児への参画が進んだ現在でも、そのような家族像を前提とした生活習慣や制度が残り、負担は女性に偏る傾向があります(注3 )。他方で、長時間労働を是とする業務のあり方が改善されない職場環境で、家事・育児を担う男性の苦境が気付かれないままであることもあります。
さらに、有職者と学生のカップルであれば学生に、スケジュールの管理が厳しい職種と裁量の多い職種では後者に、収入の違いがあれば少ないほうに負担が偏りがちであるようです。当事者たちが話し合い、合理的な役割分担として望んだ結果であればよいですが、一方が他方の時間や家庭内労働の価値を「安く」見積もった(注4 )結果、家事・育児分担の偏りが生まれている場合には、長期的なキャリアプランをふまえ、負担のバランスを見直すことも選択肢かもしれません。もっとも、家庭ごとに事情はさまざまであり、第三者から「もっと家族の協力を得る努力を」と言われても難しい場合もあることも、指導教員や管理職は心得ておく必要があるでしょう。
研究活動には、必要となる時間やタイミングを事前に確定することが難しい作業も多く、また、特定の作業に従事しない思索の時間も創造的な活動には不可欠です。子育てをしながら研究活動に従事する研究者が、ジェンダーや社会的な立場を問わず、日々の生活において自由に研究に使える時間を持てるよう、家族や職場、社会の理解が進むこと、同時に、育児中の同僚がいるために他の構成員の負担が不当に重くなることがないような職場環境の整備が進むことを切に願っています。
(文責 育児・介護支援事業WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)
注1「名もなき家事」で検索すると、さまざまな例が各所で紹介されています。忙しくても担当できる家事は、朝のゴミ出しだけではありません。「『名前のない家事』って、知っていますか?」男女共同参画通信vol.47(京都市、2019 )参照。https://www.wings-kyoto.jp//publish/.assets/Vol47.pdf
注2もっとも、大正時代まで、わが国においては、男性が育児を当然のように担っていたことについて、2020 年度全学
共通科目ジェンダー論の落合恵美子教授の授業動画をご参照ください。
http://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/activity/ilas_seminar/online_m2-2/
注3これは、男性側の要因によるとは限りません。女性が、自分がやったほうが早くすむ、家事が不得手であれば女性としての能力が低いと考えている、やり方の違いを受け入れられないなどの事情があることによる場合もあります(前掲(注1 )の文献参照)。
注4家庭内での家事や育児は対価が支払われない「アンペイド・ワーク」の代表といわれます。家庭内のケア労働は社会の再生産に不可欠の領域でありながら、その価値が経済的にも社会的にも正当に認められてきませんでした。総論的な概説書として、川崎賢子・中村陽一(編)『アンペイド・ワークとは何か』(藤原書店、2000 )を参照。
過去のコラムは、こちらでご覧いただけます。https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/column/mina/
連載: 研究者になる! -第84回-
大学院横断教育プログラム推進センター・特定准教授 木村 里子
●失敗続きから、運命の出会い
通っていた高校で出される膨大な課題をこなしつつ、友人と青春を謳歌していた当時、研究室で実験をする研究者になる想像は少ししていたものの、フィールドワーカーになる
とは微塵も想像していませんでした。将来図はぼんやりしたままだったので、職業の選択をこの時点ですることができず、選択肢の多そうな京大農学部への進学を決めました。1回生の頃は、浪人した反動もあり、典型的に遊びました。まさか講義をする側にまわるとは思ってもいませんでしたが、この頃の経験のお陰でサボりがちな学生の気持ちもよくわかります(笑)。2−3 回生の頃は家庭教師のバイトに明け暮れ、貯まったお金で海外旅行へ何度も行きました。3回生の学生実験で失敗が続き、細かな作業が苦手だと気づいた私は、大きな生き物ならば…!と単純な理由で研究室を選び、4回生で研究室配属されてからは研究一色になりました。
先生が、学生の意思を尊重してくれる研究室だったので「何の研究をしたいですか?」と聞かれた時に「海で大きい生き物…クジラの研究がしたい!」と答えたところ、外部機関にいる水中音響でイルカの研究をしている先生となら、一緒に研究が可能だと紹介されました。そして、中国でその先生のスナメリの調査に同行したことが、研究に夢中になるすべての始まりでした。
その後、大学院に進学したものの一般就職と悩み、修士1 回生の時には就職活動もしました。しかし研究がとても楽しく、もう少し続けたいと思い、やれるところまでやろう!いけるところまでいこう!と決意し博士後期課程へ進学を決めました。
●決定木でたどり着いた先はイルカの研究者!
私は、最初から研究者を目指して頑張っていたわけではなく、目の前にある二択の選択肢を選ぶことを続けていくうちに研究者にたどり着いた、と感じています。研究者は大変な職業だと思っていたので、このような感じで研究者になることはためらわれましたが、尊敬する先生に「就職も研究もどちらも楽しい、楽しそうだと思うなら、君はどちらの道へ行っても大丈夫だよ」と言われ、やっと研究職につく決心がついたのです。
そして現在、水中の大型生物、主に小型鯨類(イルカ)などを対象とし、海洋生物を定量的に観察する手法の開発、および手法を用いた生態解明に取り組んでいます。生物が発する音を利用した受動的音響観察手法、動物に直接機材を装着して行動データを得るバイオロギング手法などを用い、対象生物の発する音の特性や発声行動を調べたり、対象生物が「いつ、どこに、どのくらいいるのか」という基礎的な生態情報を明らかにしたりしています。また、沿岸における船舶航行や洋上風力発電などの騒音が生物や環境に与える影響評価、飼育施設などにおける生物のストレス評価も行っています。
その研究の過程で、生物(哺乳類)研究者である自分自身が妊娠・出産できたことは大きな経験でした。妊娠は大変でしたが、まるで繁殖生理学実習をしているかのようで、その時自分のお腹の中で何が起こっているか、別の動物だったらどうなのか、調べたり考えたりすることがとても楽しかったです。
●すべてにおいて一流をめざす自分であり続けたい
研究と生活(家事・育児など)の両立、ということに関しては、私は全くできているとは思っていません。家は散らかりっぱなし、研究も妊娠出産していた数年分は遅れています。研究も生活も何事も妥協したくない性格なので、もっと色々な外部のサービスを利用できれば楽なのかも…と思うことも多いですが、子どもが小さい今は何事も楽しむことを第一に心がけています。母、妻、研究者、すべてにおいて一流になりたいと日々願いながらも、まずは今の自分の状況を受け入れて楽しむことができていると思います。
大切しているのは、何事も自分で選ぶ、自分で決めるということです。私は、進路を決める時、就職する時、結婚する時、子どもを持つかどうか決める時、それなりに悩んで、選択肢のメリット・デメリットを考えながら、常に自分自身で後悔のないように決断してきました。結婚も出産もせず海外で研究をする選択肢、研究者にならず一般就職をしたりもっとたくさん子どもを産んだりする選択肢などもあったでしょう。それはそれで楽しそうと今なら思えますが、その時自分が決めたことに後悔はありません。どんな結果であっても自分で考えて決めたことならば、悔いなく楽しめると信じ、一日一日を大切に生活しています。