News Letter 2021.5.15 第96号
京都大学たちばな賞(優秀女性研究者賞)表彰式
3月3日(水)、京都大学たちばな賞(優秀女性研究者賞)の表彰式が行われました。新型コロナウイルス感染拡大予防の観点から、今回の表彰式はWeb 会議システムを使用したライブ配信形式で実施し、学内外から多くの視聴がありました。
京都大学たちばな賞は、優れた研究成果を挙げた本学の若手女性研究者を顕彰することによりその研究意欲を高め、もって将来の我が国の学術研究を担う優れた女性研究者の育成等に資することを目的として創設され、今回で第13回となります。
今村 博臣男女共同参画推進センター広報・相談・社会連携事業ワーキンググループ主査の司会進行で、はじめに、男女共同参画推進センター長である稲垣 恭子理事・副学長より開会の挨拶がありました。
次に、湊 長博総長よりたちばな賞学生部門受賞者の村山 陽奈子氏(理学研究科 博士後期課程2 年)、研究者部門受賞者の今村 恵子氏(iPS 細胞研究所 特定拠点講師)へ表彰状と記念盾が授与され、伊東 知康 株式会社ワコール代表取締役社長執行役員より副賞の「ワコール賞」が贈呈されました。また、優秀女性研究者奨励賞受賞者の田鶴 寿弥子氏(生存圏研究所 助教)にも、同じく湊総長から表彰状と伊東代表取締役社長執行役員から副賞の「ワコール賞」が贈呈されました。その後、たちばな賞受賞者の村山氏と今村氏による研究発表が行われました。
最後に、平島 崇男理事・副学長より閉会の挨拶があり、盛会のうちに終了しました。
2020 年度 第3 回懇話会セミナー
「無意識のバイアス 茨城大学におけるダイバーシティ推進」
3月8日(月)12 時10 分より京都大学女性教員懇話会主催の第3 回懇話会セミナー「無意識のバイアス 茨城大学におけるダイバーシティ推進」がオンラインにて開催され、約30 名の参加がありました。
まず、茨城大学ダイバーシティ推進室長の木村 美智子講師よりダイバーシティ推進室の歩みが述べられ、続いてデータを見ながら取り組みと現状について話されました。また、教員や講演者などを採用する際に選ぶ側には女性がいることが必須であることなどを述べられました。その後、参加者との質疑応答の時間があり、男女問わず貴重な意見交換ができ盛会に終了しました。
保育園入園待機乳児保育室利用者
オンライン保護者懇談会(2/16)・卒園式(3/31)
2月16日(火)にランチの時間を利用して、待機乳児保育室利用者の保護者懇談会がオンラインで行われ、保護者7名と委託運営会社の担当者、主任保育士が参加しました。担当者による司会進行で、初めに育児介護支援事業ワーキンググループの主査 齊藤 真紀先生より挨拶があり、続いて主任保育士より日々のお子さんの様子、ひとりひとりについて話がありました。
その後、参加者が自由に発言できる時間が設けられ、「週末はどのように過ごしているのか?」「寝かしつけるコツは?」など育児にまつわる悩みや、「おもちゃはサブスクリプションを利用している」といったお得で役立つ情報など、子育てに関するさまざまな話題で時間いっぱいまで大いに盛り上がりました。最後に委託運営会社作成の動画を視聴し、和やかな雰囲気で終了しました。
また、3月31日(水)10時より、保育室にて卒園式が行われ、Zoom を使ってライブ配信されました。保護者の方が見守る中、保育士から歌やメダルのプレゼントをもらったりと笑顔あふれるひと時となりました。
2020 年度「ゆりかご」から11 名の園児が巣立っていきました。卒園おめでとうございます!!
病後児保育室 開室のお知らせ
当病児保育室は2020 年3 月24 日より休室とさせていただいておりましたが、2021年4月5日(月)より当面の間、【病後児保育室】として再開いたしました。利用条件などは状況に応じてその都度変更されますので、ご利用の際はHP をご確認のうえお申し込みください。(ご利用には事前登録が必要です)
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/care/sick/
全学共通科目「ジェンダー論」講義動画 公開
2020 年度全学共通科目「ジェンダー論」の講義動画8 本を、センターホームページにて公開しています。「生物
学的性と社会的ジェンダー」「戦後日本と世界におけるジェンダーの変容」「男性にとってのジェンダー論」それぞれ
のテーマに沿った講義です。オンライン授業となったことで遠方の講師にも依頼が可能となり、充実した内容となっ
ております。どうぞご視聴ください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/activity/ilas_seminar/
家庭内から始める男女共同参画
その① まずは情報共有から
新年度が始まり、子どもの保育園や学童クラブでの生活が新たに始まった家庭も多いことでしょう。両親が就学・就労する各家庭では、このような生活を回すためのさまざま工夫をされていると思います(注1 )。
テレワークの普及により、組織では、管理職の目が行き届かないところで仕事をする従業員の活動をどのように管理するかが課題になっていますが、共働きの世帯において、家族のめいめいの予定を、体調などにも気を配りながら、毎日がそれぞれにとって意義深いものになるように管理・調整することは、組織の人事管理と同じくらい難しいタスクです。
このような生活のマネジメントの第一歩は、家族間の情報共有ではないかと思われます。とりわけ、不定期な予定が入ることが多い研究者世帯においては、会議等のために定時に帰れない時の保育園等へのお迎え、学会等による片親出張時のワンオペなど、早い段階で情報共有して対策を考えなければいけない場面が数多くあります。第三者の協力を仰ぐ場合には、その手配や確認も必要です。朝の支度をしながら、あるいは夕食時の雑談で伝えただけでは、言った、言わないの争いになりがちですし、SNS 等も見落とされたり、見てはもらえても忘れられてしまったりすることがあります。
このようなとき、たとえば、スケジュール共有アプリ(注2 )を使えば、スケジュールを家族で共同管理できるだけでなく、ToDo リスト等を共有することができます。プッシュ通知で情報が共有される機能があれば、見逃されるおそれも減ります。子どもの送迎などは、誰が担当するのかまで、自分の予定は、準備や移動で拘束される時間まですべてを書き込んでおけば、新たな予定をどのように入れられるかを、家族全員の動きを加味しながら各自において検討することができます。
子どもが持ち帰るプリントなどは、両親ともに目を通す習慣を作り、スマホ等でスキャンしてクラウド保存し、必要なときに家族の誰でも見られるようにしておくことなども、手間はかかりますが、情報が散逸しがちな忙しい家庭では有用であることもあります。たとえば、小学校からのプリントに「夏休みに持ち帰らせるアサガオは、花が咲いたら摘みとって冷凍しておいてください。2 学期に染色の授業で使います。」と一行書かれているのを見落とすと、相方の出張先から「帰ったらアサガオ冷凍しておいて」というSNS が入ったとき、「鉢ごと?」と誤解するかもしれません。わが家では、この学校からの連絡を知らなかった家族の一人が、冷凍庫にあるアサガオを不要品と誤解して捨ててしまい(生魚の骨などをゴミの日まで冷凍していることがあります)、大騒ぎになりました(注3 )。
ドイツに住む共同研究者は、「娘3人が異なる習い事をしていて、毎晩、パートナーと、翌日の娘たちの放課後の送迎をどうするか話し合うのが日課」と語っていました。
円満な家庭を維持しつつ、安定した研究生活を推進するには、パートナーの忖度や配慮に甘えず、情報を「見える化」し、忙しい毎日であっても誠実に話し合う習慣を持つことが大事であるように思われます。
(文責 育児・介護支援事業WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)
1 一人親や片親が単身赴任の世帯の研究者が直面する大変さについては、機会を改めて考えてみたいと思います。
2 興味のある人は、「スケジュール管理」「スケジュール共有」、「アプリ」、「子育て」「共働き」などのキーワードで検索
してみるとよいでしょう。
3 後日談ですが、花のシーズンを終えていたかに見えたアサガオは、その数日後、大輪の花をいくつも咲かせ、息子を救
いました。
過去のコラムは、こちらでご覧いただけます。https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/column/mina/
連載: 研究者になる! -第83回-
医学研究科・助教 鳥井 美江
●受験・部活・イベントで充実した学生生活を満喫
進学した高校は入学直後から大学受験に向けた授業が詰め込まれており、夏休み、冬休みには奈良県吉野の山奥で合格するまで就寝できない学習合宿があるなど受験勉強一色でした。高校3 年間は同一クラスで、クラスメイトと勉強したり遊んだり大半の時間を一緒に過ごしました。高校時代苦楽を共にした友人達とは進路は様々ですが、今でも年に1回は担任を囲んで飲み会をしています。大学進学後は、受験勉強から解放された反動で、学業よりも課外活動を満喫する日々を過ごしました。部活は医学部ゴルフ部と留学生支援サークルに所属し、毎月1日には朝4時から伊勢神宮に向かい、名物の朔日餅と月替わりの朝粥を食べ、1 限目の講義は睡魔と戦うのが習慣でした。留学生支援サークルでは、いろいろな国の留学生とホームパーティなどで交流し、仲良くなった友達の国を訪ね歩きました。また、奈良県の伝統行事・観光協会のイベントや、大阪今宮戎神社の福娘としてオリンピック招致活動や宝恵籠行列、十日戎に参加するなど、学外の方々との交流を通して多くの貴重な経験をする機会をいただきました。大学生生活を十分に満喫した後、卒業論文『ICU における褥瘡発生リスク』に取り組む中で『褥瘡(炎症)はどのように起こるのか?』ということに興味を持ち、大学院への進学を決めました。当時の三重大学看護学科は博士課程がなく、進学に臨床経験が必要だったことから、修士博士と一貫して学べる医学系研究科に進学し、免疫学を専攻しました。大学院では実験動物を用いて抗酸化因子チオレドキシン(TRX)の気道炎症抑制メカニズムについて研究し、医学博士号を取得しました。
●患者さんに還元できる研究を目指して
博士修了後は、京大附属病院の免疫膠原病内科で看護師として働く一方で、母校の三重大学のがんワクチン治療講座で、リサーチアソシエイトとしてTRX の大腸発がん抑制メカニズムの研究をしていました。看護師として免疫膠原病内科の患者さんのケアに当たる中で、免疫疾患のメカニズムや治療法に興味を持ち、ヒトを対象とする研究をしてみたいと思うようになってきました。2 年半ほど兼業生活を送ったのち、縁あって京大のLIMS の特定助教に採用され、研究中心の生活へと変わりました。大学教員になることが決まった時、病棟で一緒に働いていた先生に関節リウマチの共同研究に誘われ、関節リウマチ患者におけるサルコペニアについて研究することになりました。サルコペニアは加齢に伴って生じる進行性および全身性の骨格筋量や骨格筋力の低下を特徴とする症候群であり、転倒や骨折、ADL・QOL 低下の原因となります。サルコペニアは、加齢のみが原因となる場合を一次性(原発性)サルコペニア、活動・疾患・栄養に関連する原因の場合を二次性サルコペニアと分類されています。サルコペニアの発症メカニズムはよくわかっていませんが、栄養摂取量や身体活動量、筋蛋白質合成因子が加齢に伴い減少する一方で、不活動、体脂肪、異化ホルモンが増加し、筋蛋白質の分解促進、筋再生能力の低下が起こり、サルコペニアが発症すると考えられています。関節リウマチは、手足をはじめ全身の関節痛、腫脹、こわばりを特徴とする自己免疫疾患であり、炎症性サイトカインが主に関与しています。関節リウマチ患者は炎症サイトカインやステロイドの内服により筋肉が萎縮しやすいことに加え、疼痛や関節の変形で活動が制限されることからサルコペニアを発症しやすいと考え、調査を行いました。その結果、サルコペニアを合併している関節リウマチ患者には転倒や骨折が多いことが明らかになりました。また、サルコペニアの合併には年齢、罹病期間、Stage(関節破壊の進行度)、低栄養が促進的な関連因子であり、生物学的製剤の使用は、抑制的な関連因子であることもわかりました。昨年度からサルコペニアの再調査を開始し縦断研究を行っており、今年度は関節リウマチ患者のサルコペニア改善と分子標的薬の寛解休薬を目指した運動療法の治療ストラテジーの開発研究、全身性エリテマトーデス患者におけるサルコペニアやフレイルの関連因子を調べる研究を開始しています。自己免疫疾患を抱えながら私たちの研究に協力して下さっている患者さんの日常生活が少しでも楽になり、役立つことに繋がる研究をしていきたいと思っています。
●恵まれた環境のもとで研究と家庭を両立
3人の未就学児を抱えての毎日は、本当に忙しくて大変です。それでも家族との時間は、息抜きにもなり仕事にも張りがでます。夫は単身赴任ですが、週末は率先して家事(料理以外)や育児をしてくれます。夫とはお互いの研究の話をすることも多く、平日も毎晩電話で子どもの成長を共有しているので、精神的にもとても助かっています。
また、上司や共同研究者も育児をしながら研究しているため、仕事以外の相談もしやすく、職場の環境は非常に恵まれていると感じます。どうしても一人で回らない時は両親に子どものお迎えや、出張時のサポートをしてもらうこともあります。みんなにサポートしていただき成り立っている生活ですので、サポートしてくれる方々への感謝を忘れず、家族との時間も大切にしながら、今まで以上に教育や研究に取り組む事を目標にしたいと思っています。