News Letter 2023.7.15 第109号
2023年度「女子学生チャレンジプロジェクト」採択者決定
今年度より始動した「女子学生チャレンジプロジェクト」事業に、当初の予想を上回る55件の応募がありました。学内選考の結果13組が二次審査のプレゼンテーションに進み、最終的に6組が採択されました。
採択された取組は、研究計画、チーム編成の両面で大変よく練られており、かつユニークな課題設定とその解決に向けたチャレンジングな取組である点を高く評価しました。
なお、惜しくも選考に漏れた取組もいずれも僅差で大変興味深い内容でした。本事業は次年度以降も継続する予定ですので、ぜひ再チャレンジしてください。もちろん新規のご応募もお待ちしています。
※「女子学生チャレンジプロジェクト」事業
女子学生が、自らの好奇心や探求心を持ち、研究の面白さに気づき、チームで新しい課題にチャレンジする活動に奨学金を支給する事業です。
※ 次年度以降も継続予定ですが、予算状況等により採択件数、助成金額、支援対象プロジェクトの変更があり得ます。
2023 年度「女子学生チャレンジプロジェクト」採択者
「女子高生へのメッセージ動画」公開中
京都大学を目指す女子高生へ向けた動画をHPで公開しています。
京都大学を卒業し社会へ出て活躍している先輩たちから、現在の仕事について、大学時代の勉強と生活、そして高
校時代どう過ごしていたかなどの話を聞くことが出来ます。最後には進路に悩んだり、受験に不安を抱えている女子高生への応援メッセージが収録されています。
新しく3名の卒業生の動画が加わりましたので、是非ご覧ください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/story/message/
「MY STORY」学生・研究者・卒業生紹介サイト
男女共同参画推進センターでは、学生・研究者・卒業生の紹介サイトをHP内に設けています。京都大学在学中の学生や研究者、社会で活躍している卒業生のいまを知ってもらおうと作成しました。
本サイトの先輩の「Story」を読んで、女子高生や本学に在籍する女子学生に自らの未来の「Story」を描いていってもらいたい。そんな願いを込めたサイト「MY STORY」を是非、ご覧ください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/mystory/
メンター相談
男女共同参画推進センターでは、女性の先生方にメンターをお願いし女性の学生、院生、研究者の相談を受けています。「研究分野の選択で迷っている、研究を続けることに漠然と不安がある、研究分野を変えたい」など、研究上のことで困ったときはもちろんのこと、キャリアに悩んだりアドバイスが欲しいときなど、相談に対応しています。
2023年度メンターには理系70名・文系28名登録されています。
ご利用の際は下記URLをご覧ください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/consult/mentor/(日本語)
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/en/mentor/(英語)
京都大学ここのえ会主催
「京大卒女性が語るキャリアストーリー
〜悩める京大生が進路を切り拓くための2 時間〜」
6月10日(土)に吉田キャンパス構内の国際科学イノベーション棟5Fシンポジウムホールにて、「京大卒女性が語るキャリアストーリー」が開催されました。
このイベントは進路に関心のある京大女子学生向けとして、京都大学ここのえ会が主催されたイベントです。初めに浅山 理恵会長(SMBC オぺーレーションサービス㈱ 副社長)より挨拶があり、続いて、モデレーターの野崎 治子氏(京都大学・理事)の進行でパネルディスカッションが始まりました。パネリストには、卒業生である飯田 順子氏(㈱島津製作所)、櫻本 真理氏(㈱コーチェット)、多和田 容子氏(三井物産㈱)
の3名が登壇されました。
まず自己紹介をされ、学生時代の話やこれまでどのようなキャリアを歩んできたのかなど、学生へのメッセージも込めて話されました。また、決断をしなければならない場面での意思決定における考え方などを、それぞれの経験をもとに語ってくださいました。参加した学生たちは時折うなずきながら、熱心に耳を傾けていました。
後半には、ここのえ会会員と少人数のグループで自由に話す「カフェトーク」の時間が設けられており、パネリストに加えさらに様々な業界で活躍する先輩が参加されました。7〜8名が1グループとなりテーブルを囲み、学生から先輩へ質問をしたりと和気あいあいとした雰囲気で、時間いっぱいまで大いに盛り上がりました。
参加した学生からは「とてもいい機会をいただきました。進路について悩んでいたのですが、参考になる考え方ばかりでした。ありがとうございました。」や「社会人の女性の先輩と交流する機会があまりない中、女性ならではのキャリアの悩みなどを相談できる良い機会でした。様々なストーリーを知ること
ができてよかったです。」などの感想が寄せられました。
男女共同参画推進「こんな取り組みをしています!」(5)
教育・研究活動と育児等の両立のための支援充実・環境整備
医学研究科 https://www.medgender-kyoto-u.jp/
2023年3月に医学研究科がウェブサイト「京都大学医学研究科・医学部を目指す女性のみなさんへ」を公開しました。このウェブサイトでは、医学研究科で活躍する女性研究者のキャリアストーリーや女子学生の学生生活、医学研究科・医学部において表彰を受けている女子学生・女性研究者を紹介しています。また、医学部の入試情報や男女共同参画推進に関する本学の取組等を集約しています。
連載: 研究者になる! -第92回-
フィールド科学教育研究センター 瀬戸臨海実験所・助教 山守 瑠奈
瀬戸臨海実験所の位置する白浜の地層は、砂岩と礫岩が混じった塔島礫岩層からなります。比較的柔らかで崩れやすく、穴やくぼみをつくりやすいので、白浜の海にはみずから地層に掘った穴で生きる生物や、その穴を巣穴に利用する生物が多く生息しています。
たとえば、ウニの一種であるタワシウニは、鋭い歯で岩盤を掘って巣穴をつくります。おもしろいのは、この巣穴内にゴカイなどの別の生物が共生していること。さらに、タワシウニの死後には、ムラサキウニやナガウニという別種のウニが巣穴を借用し、新たな共生系が築かれます。その代表例がハナザラという貝の仲間。二次利用するウニの巣穴にのみ生息する種で、扁平な貝殻の下から覗く、小さくつぶらな黒い目がなんともかわいくてたまりません。
■海洋生物への人一倍の熱量
物心つくころから海洋生物が好きでしたが、生物学的なおもしろさに目覚めたきっかけはクラゲです。「ウリクラゲは成長するとミズクラゲになる」と母親から教わり、信じつづけていたのですが、中学生になってクラゲ図鑑に目をとおすと、なんと、ウリクラゲとミズクラゲは動物門から違うと書いてある(笑)。その驚きもさることながら、図鑑に書かれたクラゲの生態に魅せられ、生きものの世界にハマってゆきました。
京都大学の受験を決めたのは、高3の夏。日本生物オリンピック二次選考に出場したことで、私と同じような熱量で生物を見つめ、深い知識をもつ人たちとはじめて出会ったのです。志望校を聞いてみると、京大志望者の多いこと。こんな熱い人たちと一緒に大学生活を送りたいと、一念発起して京大に照準を定めました。合格はしましたが、苦手だった数学の点数は散々でした(笑)。
1回生のころから自主的に白浜に通い、瀬戸臨海実験所を拠点にクラゲや貝を調査していました。転機は、2回生で受講した加藤真先生の講義。授業後にふと、白浜での調査のことを話すと、加藤先生の目の色が変わり、「来週、奄美大島で調査しない?」と声をかけていただいたのです。こんな機会はないと奄美大島に飛びました。調査をとおして学んだのが、現在の研究テーマである海洋生物の共生系。このときの好奇心にいまも背中を押されています。
■世界で唯一、磯の生態系を追う研究者として
大学院時代は、白浜で磯のウニを掘り出しては、巣穴に潜む生物を数えていました。磯の巣穴は海に入って岩を割らねば調査できません。たいへんさゆえに研究があまり進んでいないのが実情です。人間の生活空間から近い磯の生態系を知ることは、海洋開発の面からも重要です。環境保全活動にも力を入れたいと考えています。
とはいえ、やはり原点は「おもしろい!」という興奮。研究中は、研究対象の生きものに夢中になっています。2022年に、深海に生息し、陸上から流入した落ち葉を巣づくりや食料に利用するクシエライソメの生態を解明しました。口元のぷっくりした丸い器官を動かして落ち葉を運ぶのです。この姿を見て、「なんてかわいいんだ」と思ったのがこの研究をはじめる原動力でした。
研究にかぎらず、迷ったときは「楽しい」と思える方向に舵をきってきました。選んださきになにが待っているのかはわかりませんが、そう思った方向に進めば、楽しい場所にきっとたどり着けるはず。そう信じて、邁進の真っ只中です。