News Letter 2023.1.25 第106号
女子高生・車座フォーラム2022
10月23日(日)に「女子高生・車座フォーラム2022」をオンラインにて開催しました。このフォーラムは男女共同参画推進センター主催で、女子高生に京都大学での学生生活や研究者の仕事を知ってもらうという企画です。今年で17回目の開催となり、高校生68名、保護者10名の参加がありました。開催にあたっては申込者に事前に接続テストを実施し、参加にあたり不具合がないかを確認して当日を迎えました。
はじめに稲垣恭子センター長より挨拶があり、続いて「京都大学ここのえ会」(京都大学の男女共同参画推進事業や女子学生、女性研究者等へ緩やかな支援を行う同窓会)会長の浅山理恵氏よりビデオメッセージがありました。
ビジネスパーソンとして一般企業の第一線で30年以上働いてこられた浅山氏からは、京都大学での学生生活や、男女雇用機会均等法により就職した総合職の女性第1期生として経験したことなど、大変興味深い内容のお話がありました。最後に、京都大学には時間を忘れるくらい何かに打ち込める時間を持つことを寛容に受け入れる環境、空気、風土があり、医学部から文学部まで多岐にわたる様々な分野の人に出会え、卒業してからも出会い続けられるネットワークがある、是非みなさんにも京都大学のこの広さと深さを感じて欲しいと締めくくられました。
その後、高校生は希望学部別のグループワークを教員と京大生と共に行いました。事前に集めた質問内容をもとに活発な意見交換をし、作成された資料を画面共有しながら進行している学部もありました。今回はこれまでよりグループワークの時間を30分長くしたこともあり、一部の学部では前半後半にわけ後半は3つの学部を合同にして他学部について知ってもらえる内容の充実したグループワークとなりました。
一方で保護者は京大生との交流会に参加し、受験生を持つ保護者ならではの視点からたくさんの質問がなされ、様々な学年の学部生、大学院生が熱心に答えました。
グループワーク終了後はまとめの会としてそれぞれの学部の講師よりグループで話し合った内容の報告があり、他グループの話し合いについての情報を共有しました。最後に入試企画課より入試説明動画を配信し、閉会しました。
今年度のアンケートや車座フォーラムについてはHPに掲載していますのでご覧ください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/rooting/kurumaza/
保育園入園待機乳児保育室利用者
保護者懇談会
11月22日(火)にランチの時間を利用して待機乳児保育室「ゆりかご」利用者の保護者懇談会が行われ、保護者4名の参加がありました。
前半は保育室にて主任保育士よりお子さんの日々の様子が紹介され、写真や動画を見ながらそれぞれのエピソードが語られました。後半は会議室に移動し、ランチを食べながら参加者が家庭での様子を交えながら、和気あいあいと育児にまつわる悩みを話しました。家での寝かしつけの方法として保育室での寝かしつけ方を参考に実践しうまくいっているなど、赤ちゃん期には悩みのひとつである寝かしつける技を語り合ったりしました。また、先輩パパからは初めての食べ物を食べさせる時は、アレルギー反応が出ることも想定して小児科に駆け込める時間にするなど、大変参考になる情報も聞くことができました。和やかな雰囲気の中、様々な話題について情報交換をして終了しました。
令和5年度保育園入園待機乳児室「ゆりかご」2月1日より申込受付開始
学生及び研究等に携わる教職員の研究と育児の両立を支援することを目的とし、男女共同参画推進センター内に「保育園入園待機乳児のための保育施設」(愛称ゆりかご)を設けています。この保育施設は、自治体に保育園入園申請をおこなったものの、入園待ちを余儀なくされている研究者等を対象としています。
令和5年度は4月4日(火)から開室の予定で、利用申込の受付を2月1日(水)より開始します。利用希望の方は下記の要項を熟読のうえ、お申込みください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/care/nursery/
女性教員懇話会セミナー
「男女共同参画推進、お隣の部局ではどうしてる?」
12月20日(火)12時10分より法経済学部北館3階第4演習室にて、京都大学女性教員懇話会セミナー「男女共同参画推進、お隣の部局ではどうしてる?」がハイブリッド形式で開催されました。セミナーでは、2つの部局より男女共同参画推進の取り組みについて具体的な紹介がありました。まず、大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の教授であり、子育てフィールドワーカーワーキンググループの座長でもある長岡慎介氏が「アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)の子育て支援」について、続いて、東南アジア地域研究研究所の帯谷知可教授が「東南アジア地域研究研究所の多目的休憩室」についてそれぞれ話されました。最後に、両氏から今後の課題は育児支援や介護支援を必要としている人に寄り添った支援をより充実させること、また利用者の利便性と安心・安全を両立させるよう改善策の検討をしていくこと、であると語られました。その後、参加者との意見交換がなされ、男女共同参画推進について理解を深める大変有意義な時間となりました。
男女共同参画推進「こんな取り組みをしています!」(2)
教育・研究活動と育児等の両立のための支援充実・環境整備 取組事例紹介
工学研究科(桂キャンパス)
工学研究科(桂キャンパス)のBクラスター事務棟2階のリフレッシュコーナーに「育児支援・休憩スペース」があります。今回新たに休憩スペースとして使えるように整備し「桂RESTB」として、今年度の10月に設置されました。
室内には人目を気にせず休憩できるように、カーテンで仕切ることができるスペースを設け、その他リラックスできるソファー、机や椅子もあり、必要に応じて内鍵がかけられるようにもなっています。
利用状況や利用者の声をもとに備品や設備内容の改善を図り、今後もより利用しやすいスペースとなるよう検討していくとのことです。
連載: 研究者になる! -第90回-
白眉センター・特定准教授 井上 恵美子
1980年代に生まれた「持続可能な発展(Sustainable Development)」という考え方。それまではトレードオフの関係にあると考えられてきた「環境保全」と「経済成長」ですが、これらの両立が今後の社会の発展に重要であるということを示し、世界に大きな影響を及ぼしてきました。この考え方に出会った私は強い衝撃を受け、その実現のための方策を環境経済学の視点から真剣に考えるようになり、それがいま、現在の研究にもつながっています。
■社会のために動く「経済」の考え方に共感
経済学部に進学したきっかけは、「経世済民」という中国の古典の言葉。「世を経おさめ、民を済すくう」を意味し、「経済」という言葉はこの略語です。私が思うに経済は根幹。経済活動が成り立たなければ、国の未来や自身の将来を考えたり、暮らしの環境を整えたりといった生産的な活動はむずかしくなります。「経世済民」という言葉から発展した経済学は、暮らしを改善し、人びとがよりよく生きるにはどうしたらいいのかを考えるもの。社会のための学問であることが魅力でした。
大学卒業後は、環境負荷の大きいインフラの整備に関わり、実社会において「持続可能性」がどう捉えられているのかを知りたい、「持続可能な発展」に貢献したいという思いから、企業に就職しました。運よく希望通り、高速鉄道の開発に携わることができ、多くのプロジェクトに関わりました。中国の高速鉄道プロジェクトもその一つで、日本コンソーシアムの一員として参画しました。
働くなかで感じたのは、利益の追求と環境保全とのバランスの難しさ。予想はしていたものの、いかに大企業であっても「持続可能な発展」を実現させることは容易ではないことを実感しました。そして、その限界を乗り越える方策を探るために、もう一度学問として学びなおしたいと、アカデミアの世界にもどる決意をしました。
■好奇心に導かれ、ふたたび飛び込んだアカデミアの世界
進学したオックスフォード大学では、知の探究の刺激を存分に受けました。これを一生の仕事にできたら幸せだと、研究者として歩む覚悟を決めました。海外で引き続き研究する選択肢もありましたが、日本の環境政策に携わっておられた恩師のもとで、研究に没頭しました。京大の研究環境は私にとても合いました。研究テーマを主体的に決定できる分、時間配分や進捗管理などにも自律が求められますが、この自学自習の環境で学びを深めることができました。また困難があっても、熱意をもって努力し続けていれば、道が開けると実感できる環境でした。
学術研究の世界への挑戦に迷いはありませんでしたが、教員として、子育てをしながらの研究は一苦労。同じく研究者である夫と育児や家事を分担してのりきっていますが、ときには寝不足のあまり研究がままならなくなったこともありました。そのようなときに、育児休業の制度についてお願いをしたことがあります。従来の制度では、出産や育児を考える研究者は白眉研究者への応募を躊躇する可能性があるのではないかと感じていました。私の世代には間に合わずとも、次世代に道が開かれるのならという思いのお願いでしたが、すばやく整備いただき、ありがたいことに私にも新制度が適用されました。京大にはこのような懐の深さがあり、感謝しています。
■計画書のない人生を楽しむ
ふり返ると、どのような経験もいまの研究に活きています。私がいま力を注ぐ研究は、持続可能な社会の実現に向けて、近年のCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)でも気候変動を緩和する方策として注目されている企業のイノベーションをどうしたらより創出できるか、そのメカニズムを解明すること。厖大なデータを定量的に分析して客観的事実を明らかにする過程では、企業がどう考えて動くのかを実際に見てきたからこそ気付く視点が大いに役立っています。これからも実社会とつながりをもち、社会への貢献を重視する研究者でいたいと思います。
学生たちと話していて気になるのは、最短距離で人生設計しようとする人が散見されること。人生はなかなか計画書どおりにはゆかないもの。様々な経験を積んで、予想外の人生を楽しんでほしいと思います。