News Letter 2022.5.25 第102号
令和4年度からの新体制について
男女共同参画推進センター長
理事・副学長 稲垣 恭子
京都大学では、令和4年度より「京都大学男女共同参画推進アクションプラン(2022年度〜2027年度)」が策定されました。
ジェンダー平等社会の実現は、多様な視点の共存と相互の寛容性に基づく創造的で豊かな社会の基盤であり、次世代の育成を担う大学はその中核としての役割を求められています。また、人口減少社会において、女性研究者を積極的に育成することは、優秀な人材の確保と大学の活性化にとっても喫緊の課題です。
本学におきましても、ジェンダー平等の理念に基づき、優秀な女性研究者を育成・獲得することは、自由の学風の下で創造的な知の創出をリードする研究大学としてさらに発展していく上で重要な課題です。
これらの達成に向けて策定した新アクションプランの実施を通じて、教職員・学生全体で本学におけるジェンダー平等をさらに推進していきます。
男女共同参画推進センターにおいても、このアクションプランの下で新しい事業も含め様々な取り組みを実施するため、本学男女共同参画推進体制の強化を目指して組織再編しました。従前のワーキンググループに替えて、これまでの事業を引き継ぎつつ新たな事業の企画・立案、実施までを担う専門部会を設置し、運営会議、本部会議と調整をとりつつ機動的でオープンな組織にしたいと思っています。
これまでワーキンググループにてご支援いただきました先生方には、心よりお礼申し上げます。
センターでは、待機乳児や病児の保育室の開設、研究・実験補助者の就労支援、学生を対象としたジェンダー科目の実施などの支援のほか、メンター制度を設けてさまざまな相談も受けています。
また、女子学生にとって魅力ある大学であることを知ってもらうために、女子高生車座フォーラムの実施や京大の女性研究者・卒業生の紹介(「京からあすへ」)などの広報活動も行っています。
女子学生・教員の割合は高くない状況ですが、京都大学がのびやかで自由闊達な教育・研究の場であるように、センターとしても取り組んでいきたいと存じます。皆さまのご協力をいただけますよう、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
ILASセミナー「ジェンダーと文学」開講
文学研究科 川島 隆准教授の2022年度ILASセミナー「ジェンダーと文学」が4月12日(火)より開講しました。
この授業では文学や映画など、言葉を用いたエンターテインメント作品を取り上げ、そこでジェンダーやセクシュアリティをめぐる問題がどのように表現されているかを講義いただきます。授業の前半では、講師がいくつかの作品を選んで講義し、それをもとに学生と講師がディスカッションを行います。また授業の後半では、学生に自分の好きな作品を選んで発表してもらい、それをもとに学生と講師がディスカッションを行います。
日程:4月12日(火)〜7月26日(火)
時間:毎週火曜日 5限(16:45〜18:15)
全学共通科目 2021年度「ジェンダー論」講義動画 公開
2021年度の全学共通科目「ジェンダー論」の講義のうち、下記の6つの動画をセンターホームページにて公開し ています。どうぞご視聴ください。https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/activity/online-course/
保育園入園待機乳児保育室利用者
オンライン保護者懇談会 (3/15)・卒園式 (3/31)
3月15日(火)にランチの時間を利用して、待機乳児保育室利用者の保護者懇談会がオンラインで行われ、保護者13名と委託運営会社の担当者、主任保育士が参加しました。担当者による司会進行で、初めに育児介護支援事業ワーキンググループの主査 齊藤 真紀先生より挨拶があり、続いて主任保育士より日々のお子さんの様子、ひとりひとりについて話がありました。
その後、参加者が順番に家庭での様子を話し、育児にまつわる悩みや仕事との両立など、様々な話題について情報交換をして和やかな雰囲気で終了しました。
また、3月31日(木)9時30分より、保育室にて卒園式が行われ、各家庭にZoomを使ってライブ配信されました。保護者の方が見守る中、保育士から歌やメダルのプレゼントをもらったりと笑顔あふれるひと時となりました。
2021年度「ゆりかご」から16 名の園児が巣立っていきました。卒園おめでとうございます!!
「京からあすへ」創刊のお知らせ
これまで7年にわたり発行を重ねてきた『未来に繋がる青いリボンのエトセトラ』(京都大学の女性研究者の素顔を紹介)『Will』(京都大学で学んだ先輩たちの社会で輝く姿を紹介)の二つの冊子の理念を踏襲しつつ、新たな視点を盛り込みさらに幅広い読者に訴求できる冊子として『京からあす
へ』を発行しました。創刊号では巻頭に稲垣センター長と研究者、学生との座談会を掲載しています。PDFでもご覧いただけます。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/kyo_asu/kyo_asu_vol1.pdf
研究者の妊娠・出産・復帰その③ いつから復帰する?
前回のコラムにおいては、産前休暇をいつから取得するかを扱いました。産前休暇の取得時期が決まったら、復帰時期の予定も職場に伝えておくことが通常です。また、産休・育休中においても職場とのやりとりが必要な場合に備えて、職場の連絡窓口となる関係者との間で、双方に負担にならない連絡方法について相談しておくとよいでしょう。
どのタイミングで復職するのが保活との関係で望ましいかは、保活情報交換会でも毎年話題になる点です。保育園にいったん入園した園児は持ち上がっていくので、希望の保育園において、0歳児のクラスの入園者で定員に達し、その園児たちが持ち上がった1歳児クラスで定員の拡張がなければ、1歳児になってからその保育園には入ることはできません。また、年間の保育計画や人員配置との関係で、4月入所に向けて一斉に園児を募集し、年度途中で新たな園児を受け入れない保育園も少なくありません。自治体が公表している「待機児童数」には、特定の保育園を希望しているために他の保育園の入所決定を辞退した場合が算入されていないことが多く、待機児童数ゼロの地域でも、希望する特定の保育園に入園できるとは限りません。そのため、確実に希望の保育園に子どもを入園させるためには、育児休業を早めに切り上げ、子どもが0歳4月になるタイミングで復職することが多いのが現状です(注1)。
もっとも、最近では、育児休業を長く取得したいという保護者のニーズに応え、1歳児クラスで園児を追加募集する例も増えてきており、また少子化の影響で0歳児クラスに空きがあることも多くなってきました。保育園に関する情報は、保育園がある地域を管轄する区役所・市役所等の担当部署で得られるので、妊娠したら、あるいは引っ越し先を考える際には、早めに情報を収集することをおすすめしています。
研究者には、早く研究に復帰したいという人も多く、特に産休・育休中に研究費の支給が停止している場合には0歳児4月を待たずに復職せざるを得ないこともあります。年度途中入所が難しく、希望する認可保育所に入所するために0歳児4月になるまで待たなければならない場合には、本学の待機乳児保育室の利用をご検討ください(注2)。
出産後最初の1年は、子どもの夜泣きもあり、保育園に持って行く冷凍母乳の搾乳を夜間にすることもあり、十分に寝られないことも珍しくありません。第一子のときには離乳食の準備や予防接種のスケジューリングなども初めて体験します。研究費を使用するためにやむを得ず早めに復職しても、身体を十分に休めたり、幼い子どもの世話をしたりする時間を確保したいと思うこともあるでしょう。そのような場合の選択肢として、業務に従事する時間を限定する育児部分休業などが利用できる場合もあります。しかし、育児部分休業を取得すると給与が一部減額される上、教員が育児部分休業を取得する場合は裁量労働制の適用除外となり、始業・終業時刻を含む勤務時間が拘束されることになります(例えば、勤務時間の一部に勤務できない場合は年次休暇等の申請が必要となります)。したがって、部局の事務担当と十分ご相談の上、自分の希望にかなう働き方かどうかを見極めましょう。仕事の内容(例えば在宅勤務に適した内容など)や業務のスケジュールを調整しやすい場合には、フルタイムで復職しつつ、徐々に産休・育休前の仕事のペースに戻っていくことができる場合もあります。
学生が妊娠・出産した場合には、産休・育休を取得することはありませんが、場合によっては、休学期間を決める必要があります。本学においては、授業料の納入のタイミングの関係上、「前期」「後期」の半期単位で休学することが多いようです。ひとまず半期の休学を申請し、後日、休学延長届を提出することも可能ですが、提出を忘れると授業料が発生しますので、事務的手続の締め切りも必ず確認しておきましょう。長期履修制度(注3 )の利用についても、指導教員と相談するとよいでしょう。
注1)2022 年4 月以降の育児休業等の制度の概要については、下記をご覧ください。パンフレット「京都大学における育児・介護の支援制度」
注2)https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/care/nursery/
注3)コラム「長期履修制度①②」
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/column/mina/mina008/ https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/column/mina/mina009/
過去のコラムは、こちらでご覧いただけます。https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/column/mina/
研究者の妊娠・出産・復帰その④
妊娠中および産休・育休中の過ごし方
妊娠した後も、体調が許せばいつも通りに研究・教育活動を続けたいものですが、その内容によっては長時間の立ち仕事、高いところでの作業等危険を伴う作業があるかもしれません。そのような場合には、作業内容の変更や軽減等について、職場の担当者・責任者と相談ください。また、体の負担を減らせるように、ラッシュアワーを避けるなど通勤の時間や方法を工夫しましょう。妊娠中は具合が悪くなりやすいものです。職場で休憩できるスペースを確保し、場合によっては、医師等の指導を仰ぎながら、休憩時間の延長や回数の増加を職場の責任者等に申し出ましょう。主治医等の指導を職場にうまく伝えられない場合には、「母性健康管理指導事項連絡カード」(注1)を活用しましょう。
妊娠の経過には個人差があり、また一人目と二人目で経過が全く異なることもあります。また、二人目以降の妊娠では、家に帰っても上の子のお世話があり、一人目のときよりも身体にかかる負担は大きくなります。本人も周囲もそれまでの経験を一般化せずに、いろいろな事態に備えておきましょう。
気分不良での早退、受診、転倒、切迫早産、緊急手術など、本人が連絡できない状態になることもあります。もしもの時に備えて、配偶者等の緊急連絡先やかかりつけの産婦人科医等も、職場の責任者や事務担当者に伝えておきましょう。妊娠中は、身体に2人分の栄養を供給する必要があるので、普段以上に休息や睡眠が必要となります。研究活動については、産休・育休に入るまでに余裕をもって仕上げられようにする、研究グループ間の分担を調整する、研究計画を縮小あるいは後ろ倒しにする等の見直しをすることが必要になります。
学会発表については、抄録応募が半年から8、9カ月先であることが多く、妊娠判明直後から対応を考えておく必要があります。海外学会の現地発表については、航空機搭乗の制限、診断書の要否なども事前に確認しておく必要があります(注2)。発表を見合わせたり、上司・同僚に託したりするケースもありますが、最近はオンライン・ハイブリッド形式で開催される例も増えているので、応募に際して確認しておきましょう。国内学会であれば経過が順調で安定期であれば、現地参加することも、外国に比べると容易であることが多いでしょう。長時間立つのがつらい場合は、主催者に相談すれば、椅子の準備や座って発表などをさせてくれることもありますので、問い合わせてみましょう。万一出席ができなくなった際にバックアップしてもらえる共同研究者にも声をかけておきましょう。
大学の研究者の研究はそれぞれに高い専門性を有するため、産休・育休中の代替要員を探すのが難しく、新規性にかかる競争が激しい分野においては、数ヶ月のブランクも業績の評価に大きな影響を与えることなどから、産休・育休中も研究・教育活動などを事実上継続せざるを得ないこともあります(注3)。他方で、子どもとゆっくり真剣に向き合い、出産後の身体を十分に休めることも、とても大事なことです。業務と育児のバランスの取り方については、研究者ごとに考え方は異なり、例えば家族の構成や生まれてきた子の特性や成長の具合などの状況によっても変わり、各自が悩みながらその都度、選択をしていかざるを得ません。職場や研究グループが当該研究者に期待する働きぶりもあり、研究者の研究・教育活動もそのような周囲の支えがあって初めて成り立ちます。風通しの良い環境の下で、連絡や相談がしやすい関係を築かれることを願っています。
本コラムは、今回をもって終了いたします。本ワーキンググループでは、学内の教員がボランティアでセンターの育児介護支援事業を担ってきました。人的・経済的リソースが限られている中、孤独に育児と研究・教育の両立に奮闘している同僚や後輩に対して、私たちができる支援があるとすれば情報提供であろうと、各メンバーも、自ら幼い子どもの世話と仕事を抱える中、執筆や議論の時間を捻出してきました。残念ながら、センターの改組に伴うワーキンググループの廃止により、突然終了せざるを得なくなりましたが、本コラムが皆さまに少しでもお役に立つことがあったのであれば望外の喜びです。ご愛読ありがとうございました。
(旧育児介護支援事業ワーキンググループ一同)
注1)「母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について」
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/josei/hourei/20000401-25-1.htm
注2)多くの海外旅行保険においては、妊娠・分娩等にかかる費用は保険の対象外になっていますので、妊娠に関連する高額な医療費等が自己負担になる可能性があります。
注3)ただし、休暇・休業中は研究費の支給が多くの場合停止することについては、コラムその②を参照ください。
過去のコラムは、こちらでご覧いただけます。https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/column/mina/