News Letter 2022.3.15 第101号
京都大学たちばな賞(優秀女性研究者賞)表彰式
3月3日(木)、京都大学たちばな賞(優秀女性研究者賞)の表彰式が行われました。新型コロナウイルス感染拡大予防の観点から、昨年に引き続き表彰式はWeb 会議システムを使用したライブ配信形式で実施し、学内外から多くの視聴がありました。
京都大学たちばな賞は、優れた研究成果を挙げた本学の若手女性研究者を顕彰することによりその研究意欲を高め、もって将来の我が国の学術研究を担う優れた女性研究者の育成等に資することを目的として創設され、今回で第14回となります。
今村博臣 男女共同参画推進センター広報・相談・社会連携事業ワーキンググループ主査の司会進行で、はじめに、男女共同参画推進センター長である稲垣恭子 理事・副学長より開会の挨拶がありました。 次に、湊長博 総長よりたちばな賞学生部門受賞者の中西智子氏(医学研究科 博士課程4年)、研究者部門受賞者の小田裕香子氏(ウイルス・再生医科学研究所 助教)へ表彰状と記念盾が授与され、加茂下泰生 株式会社ワコール 取締役 常務執行役員より副賞の「ワコール賞」が贈呈されました。また、優秀女性研究者奨励賞受賞者の前田玉青氏(理学研究科 博士後期課程2 年)と川崎純菜氏(生命科学研究科 博士後期課程3 年)にも、同じく湊総長より表彰状と加茂下取締役 常務執行役員より副賞の「ワコール賞」が贈呈されました。その後、たちばな賞受賞者の中西智子氏と小田裕香子氏による研究発表が行われました。
最後に、村中孝史 理事・副学長より閉会の挨拶があり、盛会のうちに終了しました。
令和4年度第1期研究支援・実験補助者雇用制度 利用者決定
令和4年度第1期研究支援・実験補助者雇用制度の利用者は、20名(女性15名、男性5名)の方に決まりました。
研究支援・実験補助者雇用制度とは、育児又は介護のために十分な研究・実験時間が確保できない研究者に対し、研究又は実験業務(注:経理等の一般事務や秘書業務及び教育関係の業務は支援対象外)を補助する者の雇用経費を助成するものです。本事業は性別は問わず、育児・介護に携わる研究者が対象となります。
令和4年度第1期より名称を「研究・実験補助者雇用制度」から「研究支援・実験補助者雇用制度」に改め、資料収集などの事務的な研究支援業務に従事させる場合には、補助者を事務補佐員又はオフィス・アシスタント(事務)として雇用できることとなりました。
2022年度保育園入園待機乳児保育室「ゆりかご」
学生・研究者の学業、研究と育児の両立を支援することを目的とし、「保育園入園待機乳児のための保育施設」(愛称ゆりかご)を設けています。この保育施設は、自治体に保育園入園申請をおこなったが、入園待ちを余儀なくされている研究者等を対象としています。
2022年度は4月4日(月)から開室の予定です。
利用希望の方は、事前登録をした上で、自治体への保育園入園申請を行い、入室希望日の1か月前までにお申し込みください。詳細については下記
URLをご覧ください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/care/nursery/
2021年度 ワーキンググループ活動報告
広報・相談・社会連携事業WG主査 今村 博臣
広報事業では、センターの活動について、ウェブサイトやwebニュースレター「たちばな」、卒業生紹介の冊子「Will」を通して、学内外に広報活動を行いました。
相談事業では、メンター登録教員を増員し、幅広い相談内容へ対応できるように体制を強化しました。
社会連携事業としては、関西の他大学と連携し、第16回女子中高生のための関西科学塾をオンラインで開催しました。京都大学においては、10月24日に様々な分野のグループに分かれて実験を実施しました。また、11月7日には女子高生・車座フォーラム2021 をオンラインにて開催しました。新型コロナウイルス感染症の影響で、どちらのイベントも昨年に引き続きオンライン開催となりましたが、両イベントとも多数の高校生および保護者にご参加いただきました。将来を担う次世代の女性たちに、早い段階から京都大学の雰囲気に触れ、教員や学生と交流する機会を提供することができたと考えています。
育児・介護支援事業WG主査 齊藤 真紀
当WGでは京都大学構成員の育児と介護に関する支援活動を行っています。
今年度も4月に男女共同参画推進センター内に待機乳児保育室を開室いたしました。ここでは京都大学の学生・研究者を対象として、認可保育所に入所できなかった生後15ヶ月未満のお子さんをお預かりしています。近年京都市に認可保育所が相次いで開設されていますが、依然として年度途中での保育所入所は厳しいもようで、保育室の総利用者数(途中退室者を含む)は年度末の時点で16名に達する予定です。
また、新たな支援の可能性を模索すべく、情報の発信と収集を促進するため、ニュースレターたちばなへのコラム掲載を継続しており、今年度は6本の記事を掲載しました。また、教職員・学生の皆さんの保活(子どもを保育所に入所させるための活動)への支援活動として、保活情報交換会を開催しました。
病児保育事業WG主査 横山 淳史
京都大学男女共同参画推進センター・病児保育室「こもも」(以下、病児保育室)は、京都大学に在籍する全ての教職員・学生の子供(生後6ヶ月から小学校6年生※ 2019年4月から年齢上限引き上げ)を対象とし、急な疾病により保育園/幼稚園、小学校などに通うことの出来ない病中病後児の保育を行っています。事前登録制による運用で、登録者数はのべ1250名、うち2021年度の新規登録者21名(2021年12月末現在)です。2021年度は新型コ
ロナ感染症対策により、病後児保育室として定員2 名で再開することとなりました。利用状況は感染症の流行に大きく左右されており、厳しい利用条件のために断わらざるを得ない日が続くこともしばしばみられますが、利用者からは概ね良いご意見をいただいています。
定期的な利用者へのアンケート調査や要望を受けて、利用基準についての見直しを随時行っており、利用者からはより利用しやすくなったという声をいただいています。感染対策上困難な点もありますが、京都大学医学部附属病院感染制御部の協力のもと、京都大学教職員・学生が育児を行いつつ、仕事や学業を継続することの可能な環境を実現するため、今後も引き続きよりよい運営方法を検討する必要があると考えています。
就労支援事業WG主査 木下 彩栄
本WGの主要活動である「研究支援・実験補助者雇用制度」については、育児や介護期にある研究者の研究継続支援という目的に即して、アンケートなどに示される利用者の声も考慮しながら、毎年、少しずつ改良を加えてきている。本年度中の実績は、第1期で応募者24名、利用者15名、第2期で応募者25名、利用者18名と、時期により変動はあるものの、ここ数年応募者は増加傾向にある。予算の制約のなかで、応募者が困難な状況にあることがわ かりながら十分な支援ができないケースも増えてきている。また、ここ数回の傾向として、特任教員・研究員など比較的短い任期で京都大学に所属している研究者、特に外国人研究者からの応募が増加している。不安定な雇用、慣れない土地、家族からの援助も望めない、という状況のなかで育児や介護と研究の両立に苦慮されている男女研究者も多い。必要な支援が可能になるよう制度を充実させることが喫緊の課題である。
教育支援事業WG主査 落合 恵美子
教育支援事業ワーキンググループは、本学の学生を対象とした正規の授業(ILASセミナー、全学共通科目)の提供を中心に、本学における性別(ジェンダー)と男女共同参画に関する教育に貢献することをミッションとしています。今年度も新型コロナウイルス感染症の流行のため、オンライン授業を余儀なくされましたが、支障なく実施できました。ILASセミナーは「ジェンダーと文学」をテーマにした講義・ディスカッションと個人発表を行い、毎回時間いっぱいまで活発な意見交換が行われました。全学共通科目「ジェンダー論」はオンライン化をむしろチャンスとして、遠方の講師も依頼し、進化生態学、霊長類の性など生物学的性と社会的ジェンダーに関する根源的なテーマに始まり、育児、年金、労働、政治参画、貧困などの社会的課題や、文学や映画など文化について、ジェンダーという視点から切り込む講義を提供しました。医学部入試女子学生差別や性的同意など、社会的関心を集めている問題も取り上げ、男性研究についても紹介しました。全14回中、プライバシー・著作権等の問題の無い6回の録画を公開動画として編集し、センターHPから公開する予定です。
連載: 研究者になる! -第88回-
文学研究科・准教授 丸山 里美
●音楽を通して興味を持った社会学
高校生の頃は、軽音楽部でバンド活動に明け暮れていました。音楽がその時代の社会的状況や差別された人たちの声を反映して生まれることを知り、大学では社会や文化について考えることのできる社会学を専攻したいと考えるようになりました。社会学を学びたい、と目標を定めてからは、京都大学文学部の受験に向けて努力しました。
大学入学後は、軽音楽部での活動のほか、映画を見たり、講演会に行ったり、おもしろそうと思ったところにはどこにでも顔を出していました。夏休みなどの長期休みにはバックパックを持って放浪の旅に出ることもありました。また1回生から参加していた現代風俗研究会という集まりで、様々な個性を持つ学生や研究者たちと知り合い、研究の楽しさに触れることになりました。そうした環境のなかで、身近にいたのが社会学の大学院生や研究者だったことも、3回生で専攻を決める際に社会学を選ぶ理由となりました。何かフィールドワークをして卒業論文を書きたいと考え、テーマを「ボランティア」に決めて、自分もボランティアをしながら参与観察をしました。大阪市西成区の釜ヶ崎地域で行われていた炊き出しをフィールドにし、3回生からは毎週のように通っていました。
●自分の目と足で。フィールドワークが私の研究の原点
「調べてものを書く」仕事に就きたくて、学部生のころは新聞記者になりたいと考えていました。しかしフィールドワークや卒業論文を書く作業が楽しく、また実際にやってみると、短期間でアウトプットを求められる記者よりも、長期間調査に取り組める研究の方が自分に向いていると思ったため、学部3回生の冬に研究者を目指すことに決めました。現代風俗研究会を通して知った、社会学の大学院生や研究者が身近にいたこともあり、研究者の生活のイメージがつきやすかったこともあったと思います。卒業論文のためのフィールドワークをした釜ヶ崎は、日雇労働者やホームレスの人が集住している、男性が圧倒的に多い街です。そこでフィールドワーク中、この街で女性が生きる困難を、身をもって知ることになりました。それをきっかけに、ときどき見かけることがあったホームレスの女性が、どのようにこの困難のなかを生きているのかを知りたいと思うようになりました。院生時代は、女性のホームレスの人を対象に実態調査をしていましたが、現在は世帯内の資源配分に焦点をあてながら、ジェンダーに留意した貧困の概念や測定の仕方について研究しています。
●限られた時間を工夫して子育てと研究を
私生活では子どももいるため、研究と家事・育児などの生活との両立に、日々頭を使っています。その中で心がけているのは、ひとつひとつの仕事にかかる時間や締切、優先順位を考えて、仕事のスケジュールを立てるということ。仕事を種類でわけ、午前中はもっとも集中力のいる仕事、ミーティングは午後に入れるようにするなど、それぞれの仕事に適した時間に行うようにすることで、限りある時間を有効に使えるように工夫しています。自分のためだけに使える時間は多くないものの、研究に関しては簡単に理解した気持ちにならず、本当にわかったと思えるまで、時間をかけて取り組むことを大事にしています。近い将来、できればまた海外で研究もしたいし、博士論文以降の研究を本にまとめる作業もしたい。子どもの成長を楽しみながら、自分の時間も大事にし、研究を続けていきたいと思っています。